2012年末から、WEC世界耐久選手権等の耐久レースで使用できるGTEクラスと、多くのプライベートチームに活用されるFIA-GT3クラスの規定を統合し、新たなGTカーカテゴリーを創設しようという動きが進められていたが、この計画が断念されたと英AUTOSPORTが報じている。
もともと改造範囲の違いでGT1からGT4までさまざまなカテゴリーが存在していたGTカーのカテゴリー。ル・マン24時間では2010年までにGT1カテゴリーが廃止され、GTカーが参戦するカテゴリーはGT2をベースとしたGTEに。一方、GT1はFIA-GT1世界選手権が開催されていたものの、こちらも11年限りでGT1カーの使用は終了していた。
一方、コストキャップを定めた車両価格や狭い改造範囲など、プライベーターを中心に広く人気を博し始めたのが、2005年に創設されたGT3カテゴリ-。独特の性能調整などで車両のバランスを均衡化し、メーカー、あるいはメーカーに委託を受けたレーシングガレージが製作した車両を販売するスタイルで、ヨーロッパはもちろん北米、日本やアジアでも広くレーシングカーが流通。自動車メーカーにとっても見過ごせないマーケットに成長していた。
そんな中、ル・マン24時間を中心にWEC世界耐久選手権を運営するFIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブは、GTEのように厳格な技術規則をもち、かつGT3なみにコストが下げられた単一のGTクラスの創設を構想。GT3に取って代わる『GT』、GTEに代わり、GTにエアロや機構などをプラスした『GTプラス』というカテゴリーを策定すべく、2012年末からGTE、GT3を製作するメーカーとともに協議が進められていた。
しかし、一方で多くのエントリーをもつブランパンGTシリーズ、イギリスGT等を運営し、GT3カーの隆盛を支えてきたステファン・ラテル・オーガニゼーション(SRO)側はFIA/ACOの提案に対し猛反発をみせていた。
協議は2016年の統合実現に向けて進められてきたといわれているが、ここへ来て英AUTOSPORTは計画が断念されたと報じている。先週末、各自動車メーカーの担当者を招きFIAのGTコミッションが行われたが、コンセンサスをとることができなかったという。
最大の争点になったのはパフォーマンスの均衡化の方法で、GTEを製作するマニュファクチャラーがソニック・エアリストリクターを支持したのに対し、FIAはGT3の市販ベースに近いエンジンを使用するため、アクセラレータと呼ばれるトルクセンサーを用いるシステムを提案したという。
正式な統合断念の発表は今週末にも行われるというが、この計画に反対したラテルはAUTOSPORTに対し、「この決定はGT3にとっても、GTEにとっても賢明だ」と語った。
「GTEのどこに問題がある? ポルシェ、フェラーリ、アストンマーチン、それに北米も入れればシボレー、SRTバイパー、BMWという車種が参戦している。GT3とGTEは異なる概念のレースなのに、なぜそれをまとめなければならないのだろうか。常識が勝ったということだ」とラテル。
また、両カテゴリーに車両を製作しているアストンマーチン・レーシングのジョン・ガウ代表は、決定に満足しているとした。
「我々としては新車を開発するより、レースをする方にお金を使いたい。新車を開発する手間がなければ我々もたくさんのレースに参戦できるし、カスタマーたちも同様だからね」