2014年05月20日 13:00 弁護士ドットコム
PC遠隔操作事件で、片山祐輔被告人の「保釈」が取り消された。東京地裁は5月16日に届いた「真犯人」と名乗るメールを、保釈中の片山被告人が送信したと判断し、保釈の取消しを決定した。
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そして20日午前、片山被告人は、東京地検によって身柄を拘束された。では、この「保釈取消し」は、どういう場合に認められるのだろうか。また、保釈が取り消されることはよくあるのか。元裁判官で、刑事事件にくわしい田沢剛弁護士に聞いた。
「刑事訴訟法96条1項は、保釈の取消事由として、次の5つを定めています。裁判所は、このどれかに当てはまる場合に、保釈を取り消すことができます。
(1)被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき
(2)被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
(3)被告人が罪証を隠滅しまたは罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
(4)被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき
(5)被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき」
今回はどれにあたるのだろうか?
「今回の片山被告人については、検察側が(3)の事由にあたるとして、保釈の取消請求をおこなったと報道されています」
つまり、「証拠隠し」にあたるということだが、この事件の場合、捜査はもう終結している。いまさら隠すような証拠があるのだろうか?
「捜査当局がすでに有罪の証拠を確保している、あるいは裁判所にすでに証拠が提出されているからといって、罪証隠滅のおそれが皆無だと考えることは早計です。
被告人が、自らの犯人性を否定するため、別に真犯人がいるとの虚偽の証拠を作り上げることも、立派な罪証隠滅行為だからです」
つまり、たとえば虚偽の証拠を作り上げた場合でも、(3)に該当するわけだ。
「また、通常は、保釈決定時に『逃げかくれたり、証拠隠滅と思われるような行為をしてはならない』といった指定条件を付されます。したがって、そうした行為は5号の保釈取消事由にも該当するということになります」
それでは、こうした保釈取消というのは、よくあることなのだろうか。
「それほど多くないですね。
保釈の取消しがなされる事例は、手元にある平成19年までの統計資料をみても、保釈された件数の0.5%にも満たない状況です」
保釈の取消しは珍しいということだが、なぜなのだろうか?
田沢弁護士は「保釈の認められる事件の大半は、犯人性に争いのない自白事件で、しかも有罪となっても執行猶予のつくことが予想されるものです。そうした状況下で、被告人があえて保釈を取り消されるような事態を起こすことは珍しいのだと、推測されます」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp