2014年05月15日 20:40 弁護士ドットコム
突然やってくる下痢ほど辛いものはない。あるビルの中でひどい腹痛に襲われ、「男子トイレまで我慢できそうになかった」という男性が、緊急避難的に女子トイレに飛び込んだ――。そんな話がネットの掲示板に載っていた。
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この男性は、女子トイレに入ったところをビル内の会社で働く女性に目撃され、「盗撮目的で侵入したのではないか」と疑われてしまったのだという。だが、こんな場合でも、異性用のトイレに入るのは犯罪になってしまうのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。
「異性用のトイレに入ることは、建造物侵入罪となる可能性があります」
尾崎弁護士はこう語る。どうして、そうなるのか。
「『侵入』というのは、管理者の承諾がない場所に立ち入ることです。
男性が女性用トイレに入ることを、ビルの管理者は通常承諾していません。したがって、『侵入』にあたると考えられるのです」
腹痛で男子トイレまで我慢できなかったというのは、言い訳にはならないのだろうか。
「たしかに『やむを得ない』と言いたいところでしょうね。こういう場合にまで、管理者は絶対に承諾していないとはいえないという理解も可能かもしれません。そうであれば、建造物侵入罪は成立しないとも考えられます。
また、こういった場合、刑法における『緊急避難』が成立するという考え方もあります。
ただし、緊急避難が認められるのは、『自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため』に限られています。
今回のケースが、管理者の不許可の範囲外だったか、あるいは緊急避難に該当するかどうか、検討の余地はあるでしょう。その際には、どれだけ切迫していたか、あるいは代替手段はなかったのかが、ポイントになると思われます」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/