2014年05月15日 20:00 弁護士ドットコム
安倍政権が6月にまとめる成長戦略改訂版の目玉として「エンジェル税制」の拡充が盛り込まれる見込みだと、報じられている。エンジェルとは、創業まもないベンチャー企業に投資する個人投資家のことだが、そのような投資をうながすために減税を進めようというのだ。
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エンジェルを支援することがベンチャー企業の育成につながる。それが、日本の産業を活性化する。そんな考えにもとづくエンジェル税制だが、現在はどのような仕組みになっているのだろうか。それが拡充されると、どんな効果が期待できるのか。服部峻介税理士に話を聞いた。
「エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するため、一定の条件を満たす未上場のベンチャー企業に対して、個人が投資した場合に、投資時点と株式売却時点のそれぞれで、税制上の優遇措置を受けることができる制度です」
優遇措置を受けられるのは、どんな場合だろうか。
「現在は、設立3年未満の企業への投資に対する『優遇措置A』と、設立10年未満の企業への投資に対する『優遇措置B』という2つの仕組みがあります。
優遇措置Aは、設立後3年未満の『赤字企業』に投資した場合に、『投資額-2,000円』を、その年の総所得金額から控除できるというものです。なお、控除額の上限は『総所得金額×40%』か『1,000万円』のどちらか低いほうとされています。
一方、優遇措置Bは、設立後10年未満の企業に投資した場合に、その『投資額全額(上限なし)』を、その年の株式譲渡益から控除できるという制度です」
このエンジェル税制、どれくらい利用されているのだろうか。
「1997年度に導入されたエンジェル税制ですが、2012年度までの累計利用金額は、88億円程度にとどまっています。その理由として、優遇措置を受けられる条件が限られていることや、手続きが大変ということがあげられます。
優遇措置Aは、設立3年未満の赤字企業への投資が対象とされていますが、実際には、設立3年目以降に事業が花開くベンチャー企業が少なくありません。また、投資家の心理としては、将来性が確実な黒字企業へ投資したいと思うのが自然でしょう」
このような課題をふまえ、どんな改正が検討されているのか。
「優遇措置Aについて、対象企業の条件を『設立3年未満』から『設立5年未満』に変更する方向で検討されています。また『赤字企業』だけでなく、『黒字企業』も対象とするよう調整されているとのことです。さらに、控除対象となる投資額の上限の引き上げも検討されています」
では、エンジェル税制が拡充された場合、どんな効果が期待できるのか。
「減税という恩恵を受けられる範囲がより広くなるため、投資する側の制度利用が活発になり、ベンチャー企業の資金調達の可能性が高まることが期待されます。
英国や米国にも似たような制度がありますが、その制度を利用した投資額は年間1000億円程度とも言われています。
投資に対する考え方の違いはありますが、今回の拡充をきっかけに日本のベンチャー企業への投資が促進され、ベンチャー業界がより発展していくことを期待したいと思います
【取材協力税理士】
服部 峻介(はっとり・しゅんすけ)
税理士業界の中で数少ない30歳の若手として、高校生・大学生の起業家を含め20代、30代の経営者といったスタートアップ企業を中心に、2年で120社超のクライアントを口コミのみで獲得し、会社の設立から会計、税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。
事務所名 : Seven Rich会計事務所
事務所URL:http://sevenrich-ac.com/
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