2014年05月13日 18:10 弁護士ドットコム
女性がトイレを我慢している姿を見ると興奮する――。そんな嗜好をもったタクシー運転手が「暴行」と「監禁」の疑いで大阪府警に逮捕されたことが報じられ、話題になっている。
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報道によると、この40代の男性運転手は昨年10月、大阪府内で乗車した20代の女性客に、利尿剤を混ぜた菓子を食べさせたとされる。その後、女性がトイレに寄るよう求めたのに聞き入れず、約1時間40分にわたって高速道路を走行し、車内で女性を失禁させた疑いが持たれている。
こうした行為が犯罪として検挙されるのは当然だと考えられるが、一般的な「暴行」や「監禁」とは異なる気がする。なぜ運転手はこの容疑で逮捕されたのだろうか。小野智彦弁護士に聞いた。
「一般的に暴行といえば、殴る蹴るが典型です。しかし刑法上の暴行は、『身体に向けられた不法な有形力の行使』とされていて、それにあたる行為の範囲は、非常に広いと考えられています。
たとえば下剤を飲ませる行為も、人間の生理的機能を害する危険性のある行為として、暴行にあたることがあります」
今回の事件では、どこが暴行容疑の部分なのだろうか。
「今回の事件に当てはめると、女性客に利尿剤を混ぜた菓子を食べさせたという部分が、暴行の容疑になります。
利尿作用を促進させるということは、いわば下剤を飲ませることと似ており、人の生理的機能を必要以上に促進させる、つまり身体の生理的機能を害する行為になりうるからです。
なお、刑法の暴行罪は、『暴行を加えたけれども傷害に至らなかった場合』と定義されていて、実際に身体の生理的機能を害したならば、傷害罪になります」
それでは、「監禁」容疑のほうはどうだろうか?
「刑法の『監禁罪』は、人を一定の限られた場所から脱出できなくしたり、脱出を著しく困難にすることで、場所移動の自由を制限することです。
わかりやすいのは、力ずくで人を部屋などに閉じこめるような場合だと思いますが、法律上、監禁するための手段に制限はありません。
たとえば、女性が温泉に入っている隙に洋服などを持ち去り、浴場から外へ出られないようにしてしまうことも、『監禁』になります」
そうすると車を止めずに走り続けることも、「監禁」になる?
「高速道路を走行中のタクシーから脱出したければ、車から飛び降りるしかありませんね。しかし、そんなことは現実的ではありません。
つまり、運転手はタクシーの車内から乗客が脱出できない状況を作りだしたといえますから、まさに『監禁』に当たるわけです」
小野弁護士はこのように説明していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
小野 智彦(おの・ともひこ)弁護士
浜松市出身。1999年4月、弁護士登録。オフィスは銀座一丁目。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏が漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴した事件などの代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。
事務所名:銀座ウィザード法律事務所
事務所URL:http://homepage2.nifty.com/tomo-ono/lawyer