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日本で「社長」だった人がアメリカでは「CEO」 どこがどう違うの?

2014年05月12日 15:20  弁護士ドットコム

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アメリカの大手自動車メーカー、フォード・モーターの新しい最高経営責任者(CEO)に、マーク・フィールズ氏が就任することが発表された。フイールズ氏は、1999年から2002年までマツダの社長を務めた経験がある、日本にゆかりのある人物だ。


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「マツダの元社長がフォードのCEOへ」。新聞各紙はそのように報じているが、会社経営のトップという点では同じなのに、一方は「社長」で、もう一方は「CEO」。呼び名が異なっているのが、ちょっと気になる。そういえば、会社トップの呼称としては、「代表取締役」というのもあるが、どう違うのか。



「社長」と「CEO」と「代表取締役」。それぞれの名前があらわしている意味について、企業法務にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。



●それぞれの肩書きが持つ意味は?


「『社長』と『CEO』と『代表取締役』という3つの肩書きのなかで、会社法で定められているのは、『代表取締役』だけです。似てはいますが、厳密にいえばそれぞれ違う概念です」



今井弁護士はこのように説明する。それぞれ、どのようなものなのだろうか。



「そもそも株式会社とは、金は出すが経営の素人という『株主集団』が、経営のプロである『取締役』にがんばって業績を上げてもらい、最終的には株の配当や売却で儲けよう、というシステムです。



『代表取締役』は、取締役のなかで、その会社を代表する資格を持っている人です。代表資格を持つのは、多くの場合、取締役の一部、または一人だけですが、なかには取締役全員が代表取締役という会社もあります」



この代表取締役の役割は、会社を代表して契約をしたり、会社の業務を執行することだという。業務執行といえば、会社には「執行役」と呼ばれる地位を設けているところもある。



「日本にも、米国型の株式会社のように、取締役会が経営の大枠だけを決めて、個々の業務戦略や業務執行は『執行役』と呼ばれる人に任せている会社があります。



これは、経営の大枠の決定と業務執行を分離して、めまぐるしく変わる経営環境に迅速に対応していこう、という考え方に基づいた制度です。



米国の会社では執行役のうち、最高責任者をCEOと呼びます。これは、日本の法律にはない概念です」



●社長、会長、CEOは法律とは関係ない名称


つまり、日本の会社のCEOは、「会社が自主的にそのような名称を使用しているだけで、法律上の名称や地位ではない」ということだ。これは、「社長」や「会長」などの役職でも同じことだという。



「社長や会長も、法律で定められた呼称ではなく、会社の定款(会社が独自・自主的に決めた根本規則)で決められた地位です。



社長は通常、代表取締役の地位を有していることが多く、会長は、その社長を退いた人であることが多いのですが、社長や会長が代表取締役の地位を有しているかどうかは、会社によってまちまちです。多くの会社では、社長が代表取締役を兼ねていますが、そうでない会社もあります」



どうやら、日本の会社における「CEO」や「社長」という肩書きは、それぞれの会社が独自の方針にしたがって名乗っているようだ。どんな肩書きを名乗っているかで、そのトップの考えが透けてみえる部分もあるのかもしれない。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
平成11年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における個人情報保護運営審議会、開発審査会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html