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F速分析:F1スペインGP。メルセデス圧勝も、白熱するチームメイト対決に期待

2014年05月12日 07:20  AUTOSPORT web

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圧倒的速さ&強さのメルセデス。しかし、チームメイト同士の争いも白熱し、今季の魅力を増している
●もうお手上げ? メルセデスAMGの圧倒的強さ

 スペインGPはメルセデスAMGの圧勝に終わりました。3位ダニエル・リカルド(レッドブル)に50秒もの差をつけ、7位キミ・ライコネン(フェラーリ)までを周回遅れにしてしまうという、想像を絶する強さです。完全に中国GPの際よりも、その差は大きく開いています。

 ただ、3位との差50秒という数字は、実は予想よりも小さいものでした。予選までのパフォーマンスから計算すると90秒の差、つまり全車が周回遅れになってもおかしくはなかったのです。さすがにこの差はそう簡単に埋まるものではなく、当分はメルセデスAMGの圧勝劇が続くと見ています。

●激アツ! チームメイト頂上決戦

 ルイス・ハミルトンはスペインGPで勝って、マレーシアGPから4連勝を達成。一方チームメイトのニコ・ロズベルグは、開幕戦優勝+4連続2位。結果だけ見るとハミルトンが圧倒しているように見えますが、ロズベルグもハミルトンに負けじと必死に食らいつき、それに対抗するハミルトンが更に頑張る……そういう構図になっています。これが、今季最大の見どころでしょう。今回のスペインGPでも、ロズベルグはハミルトンになんとか勝とうと、作戦を変え、必死に攻め、チェッカー時には0.6秒差。特にラストの数周は、手に汗握る攻防でした。

 能力が拮抗し、それぞれが全力でぶつかり合っているという印象のふたり。どちらが勝ってもおかしくありません。ある意味、アイルトン・セナとアラン・プロストを擁した1988年のマクラーレンに似ているような気もします。そういえば、その年のマクラーレンは16戦15勝という圧倒的強さでしたが、今年のメルセデスAMGはどのくらい勝つのでしょうか? トラブルやアクシデントがない限り、史上初の“シーズン全勝”が達成されてもおかしくはなさそうです。

●勝負を分けたピット戦略

 なお今回のレースでは、戦略がドライバーによって分かれ、これが順位を大きく左右しました。

 ハミルトンとロズベルグは、共に中古のミディアムタイヤでスタートしました。ハミルトンは18周を走り切ったところでピットイン、新品のミディアムに交換しています。対するロズベルグは、3周遅れてハードタイヤに交換しました。この3周の間にハミルトンは1周あたり0.5秒程度のギャップを構築、さらに最後のピットインもロズベルグはハミルトンの2周後で、ここでもやはり1周あたり1秒程度の差が生じています。フィニッシュ時の差が0.6秒でしたから、ロズベルグのピットインが少しでも早ければ……順位は異なっていたかもしれません。

 リカルドとバルテリ・ボッタスの争いも、戦略が大きく影響しました。スタートでボッタスの先行を許したリカルドは、トップスピードに勝るウイリアムズを抜きあぐね14周終了時に早々とピットイン。ボッタスはこれに反応せず、当初の予定どおり2ストップ作戦の標準的なタイミングである20周を走り、リカルドの先行を許します。その後、本来ならばボッタスはリカルドとの差を徐々に詰めなければなりませんが、なかなかリカルドとの差は縮まらず、しかもタイヤのデグラデーションが少ないためにリカルドのペースも落ちず……。結果、リカルドには2ストップ作戦に変更する余裕が生じ、リカルドに軍配が上がりました。

●ベッテル驚速の要因は、新品タイヤ

 ベッテルは15番手スタートだったにも関わらず、飛ばしに飛ばしてボッタスまでをオーバーテイク。4位を得ています。ベッテルが速かった最大の要因は、新品タイヤの存在です。ベッテルは予選Q3でアタックできなかったこともあり、2セットのミディアムタイヤを新品のまま残すことに成功。これを第3、第4スティントで使い、どんどん順位を上げました。

 アロンソはこれに反応し、ベッテルが2回目のタイヤ交換を行ってものすごい勢いで追い上げてくるのを確認するや否や、自身も2回目のピットイン。ベッテルの前を抑えます。ただ、ベッテルは3回目のタイヤ交換をアロンソより早く行い、このタイミングでアロンソを逆転することに成功。しかも、アロンソは新品のミディアムタイヤを持っておらず、これ以上抗うことは無理でした。

●3ストップの成功と失敗

 ただアロンソは、3回ストップを行ったことにより、予定通り2回ストップのまま走り続けたライコネンに対して第3スティント前半で約2秒×8周、最終スティント前半で約1秒×4周程度を稼ぎ、残り4周というところでオーバーテイク。6位の座を獲ました。ライコネンもコメントで「2ストップは失敗」と語っています。

 一方、フェリペ・マッサは3ストップ作戦のために大きく順位を失いました。彼は最初のピットインを他のドライバーとほぼ同じ15周目に行いますが、曰く「フロントタイヤにダメージがあった」とのことで、ペースが落ちるとすぐに2回目のタイヤ交換。これは極端に早く、28周目のことでした。これで2ストップに変更する“余裕”を失い、作戦の幅を狭めてしまいます。しかも第3スティントは、序盤に攻めすぎたためかラップタイムが早々に下落し、しかも順位を争っていたライバルたちが3回目のストップを行わなかったため、後方に沈んでしまいました。

 メルセデスAMGの圧倒的な強さが目立ったスペインGPでしたが、チームメイトバトル、タイヤ戦略など、今季のF1を楽しむための要素も見えたグランプリだった、とも言えそうです。しかし次回のモナコGPは、今回とは全く異なる要素が詰まったサーキット。当然メルセデスAMGは速いでしょうが、まったく予測できない結果が待っているかも……。ぜひ2週間後のモナコGPにもご期待ください。
(F1速報)