インディアナポリス・モータースピードウェイのロードコースで開催されたベライゾン・インディカー・シリーズ第4戦。リニューアル後初のウイナーには、サイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン)が輝いた。佐藤琢磨(AJフォイト)は、粘りの走りを見せ9位でレースを終えた。
グランプリ・オブ・インディアナポリスの初代ウイナーとなったのはサイモン・ペジナウだった。普段のオーバルとは逆回りでメインストレートと南ショートストレートを使うロードコースで行われた82周のレースは、スタンディングスタートで始まったが、大きなアクシデントが先ず起こり、レース半ば過ぎのリスタートでも多重アクシデントが発生した。
スポット参戦のフランク・モンタニー(アンドレッティ・オートスポート)は、同じくスポット参戦のルーキー、マルティン・プラウマン(AJフォイト)がブレーキングでコントロールを失い、コーナーの縁石でジャンプして突っ込んで来るという、ひどいアクシデントの犠牲者となった。接触で6台ものマシンがリタイアに追い込まれるという、実に荒れたレースとなった初開催イベントだった。
スタートの多重アクシデントは、ポールシッターのセバスチャン・サーベドラ(KV/AFS)がエンジンストールしたことがきっかけとなった。19番手スタートだったルーキーのカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)は、もう4速か5速にシフトアップしていてスピードも乗っており、停止していたマシンを避け切れなかった。左側にはファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)が同じくエンジンストールでストップしていたのだ。ムニョスがサーベドラに激しく突っ込んだ直後、ロシア人ルーキーのミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン)がサーベドラに激突した。
51周目のリスタートでは、ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)とグラハム・レイホール(RLLR)が接触し、レイホールがコース外側の壁にクラッシュ。ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)は、前方で接触した2台のマシンから飛んで来たマシンの破片がヘルメットを被った頭部に衝突。脳しんとうを起こしてレースからリアイアを喫した。
ペジナウは予選4番手から好ダッシュ。レース序盤には2番手に付けルーキーのジャック・ホークスワース(BHA)を追った。ホークスワースはピットタイミングの悪さなどにより後退。終盤を迎えたレースのイニシアチブを握り、独走体制を築き上げたのはオリオール・セルビア(RLLR)だった。しかし、彼はフルコースコーションを期待したのか、燃料補給を行えるだけのリードを確保すべく全力で走っていたのか、10秒近くにまでリードを広げたところでピットロードへ。しかしピットアウトでエンジンをストールさせたため、優勝どころかトップ5でのフィニッシュすら果たせなかった。
82周のレースの78周目にしてトップに立ったぺジナウは、背後に迫るライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)を振り切り、今季初優勝、キャリア3勝目を挙げた。ゴール時のハンター-レイとの差は僅かに0.8906秒しかなかった。ふたりは燃費セーブとスピードの両立をはかり、ギリギリ燃料を持たせてゴールへと飛び込み、ホンダの1-2フィニッシュを達成した。
「インディでの優勝はとても嬉しい。マシンもエンジンも最高だった」とペジナウは喜んでいた。「燃費セーブを全力で行い、ラップタイムの維持も実現させるのは大変だ。チームは本当に頑張ってくれていた」と話していた。
3位はエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)。彼には燃料の心配がなく、ゴールを目前にして最もハードにプッシュをしていた。しかし、彼はハンター-レイを攻略できず、ぺジナウとでも1.8244秒という小さな差ではあったが、順位は3位に甘んずるしかなかった。もっとも予選10番手からのスタートだったことを考えれば、トップ3フィニッシュは喜ぶべきだとも言える。4、5位はセバスチャン・ブルデー(KVSH)、チャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)だった。
佐藤琢磨は粘り強い走りで16番手スタートから9位フィニッシュを達成した。最初のスタートでマシンに他車の破片がぶつかり、タイヤのパンクが心配されたためにピットイン。周回遅れに陥るシーンもあったが、ピットタイミングの巧みさで1ラップを挽回。レース終盤にはソフトタイヤでトップグループに匹敵するラップタイムをコンスタントに記録していた。
「いろいろあったレースでしたが、チームが頑張ってくれてトップ10でゴールすることができました。チームが力を発揮して得た9位ですが、マシンのスピードは本当の上位陣にまだまだ届いていません。今日のレースではマシンの破片が飛んで来て、フロントノーズにダメージを与えた上、ヘルメットをかすめた大きなパーツもありました。幸いにも頭部にぶるかることはありませんでしたが……」と佐藤は話していた。
ポイントリーダーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、ピットでのエクィップメントとの接触があってペナルティを課せられ、優勝争いから脱落。ゴールは8位となったが、ポイントリードは辛うじて保った。パワーに1点差のシリーズ2位となったがハンター-レイ。そこから5点差の3位につけるのがペジナウだ。佐藤は今季2回目のトップ10フィニッシュを達成し、ポイント13位となっている
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第5戦のインディ500は、明日の日曜がプラクティス初日。インディカー・シリーズは休み一切ナシで次戦へと突入する。
(Report by Masahiko Amano / Amano e Associati)