2014年05月10日 13:30 弁護士ドットコム
屋外でのバーベキューに絶好の季節になった。河川敷やキャンプ場で肉や野菜を焼くのも開放感があっていいが、家族や友人と自宅の庭でバーベキューするのも、また楽しい。
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しかし、そんな自宅でのバーベキューが、ご近所トラブルの原因になってしまうことがある。ネットの相談サイトには、自宅の庭でバーベキューをしていたところ、隣人から「迷惑だからやめてください」「煙を撒き散らすのは非常識だ」と文句を言われ、バーベキューをあきらめたという投稿が寄せられている。
たしかに、バーベキューの煙がどんどん流れてきたら、部屋の換気や洗濯に差し支えるかもしれない。もし、近所から「迷惑だからバーベキューをやめろ」と言われた場合、それに従わなければならないのだろうか。東山俊弁護士に聞いた。
「一般論として、『悪臭』が度を超えてひどい場合には、それを出す行為が違法であると判断されることがあります。
判例でも、悪臭を出してはならないという差止めや、損害の賠償が認められたことがあります。
これは、悪臭によって、快適な生活を送るという生活利益が侵害されるためで、煙に関しても同様だと言えるでしょう」
どんな状態なら「違法」とされるのだろうか?
「快適な生活が侵害されたとしても、常識的にみて、がまんするのが当然な場合まで、違法とすることはできません。そこで、裁判所は特に悪質な場合に限って、『受忍限度』を超えるとし、違法な行為としています」
この「受忍限度」はざっくりいうと、「我慢の限界」ということだが、それを超えたかどうかについて、どんな判断基準があるのだろうか。
「問題になるのは、まずは『悪臭の程度』です。これに関しては、『悪臭防止法』の定める規制基準を超えるかが、重要な判断基準となります。
煙に関しては、実際に生活に支障が出ているかが問題になるでしょう。
そのほか、悪臭や煙が出ている時間や周辺地域の環境、被害の態様・程度、損害の規模などが考慮されることになります」
バーベキューをする際には、そういった基準を超えないよう、気をつけないとまずい?
「数人規模で行うバーベキューなら、近所の家で測定しても、悪臭の強さが基準値を超えることはあまりないと考えられます。
そもそもバーベキューは、腐敗臭などと違い、誰もが不快感を覚えるにおいを出すわけでもありません。
また、バーベキューをするのは、数カ月に1回、数時間程度で、においを出す時間も短いといえます」
そうすると、ある程度のにおいは「我慢しろ」ということになる?
「そうですね。住宅密集地で、バーベキューを極めて頻繁に行っているとか、特に悪質であるという事情がない限り、バーベキューのにおいが違法だと判断されることはないでしょう。
煙に関しても基本的に同じで、洗濯物が煙で汚れてしまうといった特別な事情がない限り、バーベキューで煙を出すのが違法だと判断されることはないでしょう」
そうなると、節度を保って行われているバーベキューを、法的に止めさせるのは難しいと言えそうだ。
「そのとおりです。ただし、これまで述べたのは、あくまで違法かどうかという観点からの結論です。
近隣住民とのトラブルは、違法とまでは言えない問題の積み重ねの結果という場合が多いですね。
したがって、事前に声をかけておくなど、そもそも苦情を言われないように配慮することが好ましいでしょう」
東山弁護士はこのようにアドバイスを送っていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/