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「日本政府は説明つくすべき」 秘密保護の「国際ルール」策定関与の元米国高官が批判

2014年05月10日 09:50  弁護士ドットコム

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安全保障と知る権利に関する国際ルール「ツワネ原則」の策定に深く関与した米国政府の元高官モートン・ハルペリン氏(75)が5月9日、東京都内で講演した。ハルペリン氏は、昨年12月に成立した特定秘密保護法について、「国会、市民社会、国際的な専門家との話し合いが欠けている。日本政府はもっと説明を尽くすべきだ」と批判した。


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ハルペリン氏は、米国の政治学者。ジョンソン政権で沖縄返還交渉に携わり、ニクソン政権の国家安全保障会議メンバーやクリントン政権の大統領特別顧問などを歴任した。ツワネ原則は、米国の財団の呼びかけによって検討が始まり、2013年6月に南アフリカのツワネで定められた。ツワネ原則のベースとなった自由権規約には日本も署名していることから、この原則の適用をめぐって議論がおきている。



●日本の秘密保護法は「ツワネ原則」を逸脱


ツワネ原則では、ジャーナリストや市民活動家を処分してはならないことや、情報源の開示を求めてはならないことを定めている。ハルペリン氏は「米国の同盟国で秘密保護法を持っている国はあるが、民間人やジャーナリストに刑事罰を科す国はない」と指摘し、民間人に刑事罰を科す可能性がある日本の秘密保護法について、ツワネ原則を逸脱していると批判した。そのうえで、「ツワネ原則よりも厳しくするのであれば、市民に説明する義務がある」と述べた。



また、秘密保護法の策定に米国が関与したかどうかについて、「日本の政府高官に対して、もう少し厳しい機密保護法があったほうがいいと進言した人もいるだろう。しかし、深刻な圧力ではない」とあくまで日本独自の判断であることを強調した。



●契約職員だったスノーデン氏を保護すべきか


質疑応答では、米国家安全保障局(NSA)による個人情報の収集の実態を告発したエドワード・スノーデン氏についても話が及んだ。ハルペリン氏は、スノーデン氏を保護すべきかどうかについて、「米国政府がすべての情報を集めている実態を告発したので、当然保護される状態にある」としたが、実は「確信がない」という。



「彼は政府の職員というより、政府と契約を結んだ職員の立場だった。内部告発者の保護に当てはまらない面もある」というのだ。ハルペリン氏は「米国の内部告発に関する法律を、契約職員にも当てはめるべきかどうかという問題を浮き彫りにした。論議が始まったところだ」と述べ、内部告発の保護対象をめぐる線引きの難しさを指摘していた。



また、会場から「日本の秘密保護法の反対運動の進め方をどうすればいいか」という質問が出た。それに対して、ハルペリン氏は「熱意は感じられます」とだけ答え、あくまで日本国内で独自に取り組みが進むことを期待しているようだった。



ハルペリン氏は、5月9日から4日連続で講演することになっており、各地で秘密保護法の問題点を指摘する予定だ。


(弁護士ドットコム トピックス)