2014年05月08日 12:20 弁護士ドットコム
フェイスブックに投稿された子どもの写真。楽しそうに遊ぶ姿や満面の笑みは、見ている人の心も和ませてくれる。だが、もし自分の子どもの写真が、勝手に掲載されていたら、どう思うだろうか。
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別居中の夫が、フェイスブックに子どもの写真を投稿するのを止めさせたい――。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、そんな女性の声が寄せられている。別居中の夫は、妻から要求されて、いったん子どもの写真を削除したが、しばらくすると「子どもの写真を載せて何が悪い」と反発して、再び投稿するようになったのだという。
フェイスブックのようなSNSに子どもの写真を投稿することについて、夫婦で意見が合わない場合、片方の親が写真を削除させることはできるのだろうか。インターネットの法律問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。
「一般的に、インターネット上にアップされた写真を削除するためには、その写真で名誉権やプライバシー権といった人格権を侵害された『本人』が、ウェブサイトの管理者等に対して、削除を請求する必要があります。
子どもの写真が掲載されているだけだと、母親の権利が侵害されているわけではありません。つまり、その子ども自身でないと、写真の削除を請求できないということになります」
小さな子ども自身が請求しなければならないというのは、現実的でない気がするが・・・。
「そうですね。未成年者には原則として、契約などの法律行為を有効におこなう能力(資格)がないとされています。
この能力は法律上、『行為能力』と呼ばれています。そして、未成年者は、日常的な買い物などの法律行為を除いて、行為能力がないとされています
そこで、通常、未成年者の法律行為は、『親権』を持っている人が代理でおこなうことになります」
親権というのは、ざっくりいうと子育てをする権利だ。母親には当然、親権があるから、それで代理をするわけにはいかないのだろうか。
「少しややこしいのですが、父母が婚姻中の親権は『共同親権』とされ、夫婦で共同して行使することが必要とされています。つまり、片方の親が反対していれば、親権の行使はできないということです」
親権が使えないということは、代理もできない?
「残念ながら、そうですね。今回のようなケースで、父親の反対を押し切って、母親が単独で子どもの写真の削除を請求することは、法的には困難と言わざるをえません」
そうなると、母親に残された手段は?
「父親をなんとか説得して、自主的に削除してもらうしかないでしょうね」
清水弁護士はこのように結論づけたうえで、次のようにアドバイスを送っていた。
「父親を説得をする際には、『何となくイヤ』という理由では、応じてもらえないでしょう。子どもにどのような不利益が生じる可能性があるのか、具体的に説明して、理解してもらうしかないのではないでしょうか。
たとえば、幼児性愛を持つ者により、写真を興味本位に扱われたり、拡散されるおそれがあるといった説明がありえるでしょう。また、写真にGPS情報が含まれている場合、誘拐被害に遭う可能性があるということもありえるのではないかと思います。
どうしても夫婦での話し合いがつかない場合には、簡易裁判所でおこなう民事調停という手続きを利用して、調停委員という第三者をまじえて解決を図るという方法もありえると思います」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
IT法務、特にインターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定に注力しており、平成24年には東京弁護士会の弁護士向け研修講座の講師を担当し、26年にも同様に講師を担当している。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp