5月3日~4日、富士スピードウェイで2日間計89400人の観衆を集めて開催されたスーパーGT第2戦富士。ここで日本国内において初めて、市販のBMW M4が公開された。BMWの新世代プレミアムスポーツクーペであり、モータースポーツ界でもDTMドイツツーリングカー選手権でBMW M4 DTMがデビューウインを飾ったモデルだが、そのM4に乗車させて頂く機会に恵まれた。
BMWは2013年から、それまでセダン、クーペが存在していた3シリーズから、セダンを3シリーズに、クーペを4シリーズとして変更。それぞれのシリーズの最高峰となる『M』モデルも、セダンがM3、そしてクーペがM4という名称となった。
新M4クーペは、今年2月から日本国内で注文受付を開始。7月から納車および販売開始を予定しているが、それに先立ちお披露目されたのが、今回のスーパーGT第2戦富士。土曜の予選日はイベント広場のBMWブースで公開され多くの注目を集めたほか、日曜には決勝レースに先立ちレーシングコースでデモランを行った。
■大人4人がゆったり乗れるプレミアムクーペ
そんなM4が今回の先行公開に向けドイツから空輸され、富士スピードウェイに持ち込まれたのが予選日目前の金曜日。ちょうどGT300クラスに参戦するBMW Sports Trophy Team Studieの鈴木康昭監督と立ち話をしていると、爽やかな晴天のパドックにオースチン・イエロー・メタリックに彩られたM4が姿をみせたのだ。
鈴木監督は、日曜のデモラン時における場内実況の“取材”のためにM4を試乗することになっていたのだが、写真を撮っていると「一緒に乗りますか?」とありがたい声をかけていただいた。当然ながら運転席ではないが、千載一遇のチャンス。喜んでリヤシートに座らせていただいた。
まず驚いたのは、そのリヤシートの広さだ。当然2枚ドアなので乗り込む際はやや身をかがめる必要こそあるが、一度座ってみればしっとりと体にシートがなじむ。そして、背の高い鈴木代表のドライビングポジションにもかかわらず、その後ろに座った173cmの自分の足下は全然余裕がある。当然、車体の大きさは今までのM3に比べても大柄になっていることもあるが、ヘッドクリアランスも十分。大人4人が楽に長距離移動を楽しめそうだった。
■官能的なエキゾーストと軽量ボディを実感
さて、3リッター直6・Mツインパワー・ターボエンジンが目を覚ますと、低めながらレーシーなエキゾーストノートが聞こえ始める。鈴木監督が7速M DCT Drivelogicを1速にセレクトし走り出すと、サウンドが高まり軽やかに動き始めた。
当然ながらレーシングコースに出る訳にはいかず、走行できたのはサーキットの周回路を2周ほど。とは言え、M4のパフォーマンスの片鱗をうかがい知ることができた。7速M DCT Drivelogicは変速のショックがまったく感じられないほどスムーズで、回転数による音だけが変化していく。少しアクセルを踏み込めば、官能的にエンジンが吹け上がりあっという間に速度が上がってしまう。周回路なので、逆に飛ばしすぎないように気をつけなければならないほどだった。
また、特筆すべきはコーナーでの車体の軽さ。これは後席に座っていても痛感するほどだった。BMWのインテリジェント・ライトウェイト構造により高い運動性能が実現されているというが、コーナーもまったく破綻なく通過していった。逆に、少しペースを落としクルージングしてみると、その走りは上質な高級車のもの。街乗りもまったく問題はない。
■大人が童心に戻るスポーツカー
周回路を走った後、エンジンルーム内も拝見させていただいたが、エンジン上にかかるストラット・ブレースはCFRP製でわずか重量1.5kg。また、ルーフ、プロペラシャフトもCFRP製だという。その軽さにも納得だ。また、このM4、そしてM3はDTMに参戦するティモ・グロック、ブルーノ・シュペングラーが最終的に仕上げを行ったという。納得の固すぎず、柔らかすぎない乗り心地だった。
数多くのBMW車をドライブした経験がある鈴木監督も、ステアリングを握りながら「いいなぁ!」とまるで子どものよう。富士スピードウェイのゲートを背に写真も撮ったが、愛用のライカを手に終始喜色満面だったのが印象的だった。大人をあっという間に童心に帰してしまうような、M4はそんなワクワク感をもったスポーツクーペだ。気になる方は、ぜひBMWジャパンのホームページをご覧あれ。
ちなみに、今回の“試乗”は鈴木監督とBWMジャパンの広報氏の3人だったが、走行中「今まで日本国内で、このM4に乗ったことがあるのは何人います?」と聞いてみると、「我々3人を入れても、まだ10人いないんじゃないですか?」とのこと。超ラッキーでした(笑)。鈴木監督、BMWジャパンの皆さんに感謝したい。