4日、110周の決勝レースが行われたスーパーGT第2戦富士で相次ぎストップしたGT500クラスのホンダNSXコンセプト-GT。このトラブルの原因は、熱害による電装系によるものだという。
今季、GT500クラスではDTMドイツツーリングカー選手権と車両規定を統一、共通モノコックをはじめ多くの共通パーツを使用する規定に改められたが、もともとこの規定はFRレイアウトの車両のためのものだった。将来市販が予定されているNSXコンセプトはミッドシップ+ハイブリッドのスポーツカーであり、シリーズをプロモートするGTアソシエイションでは、プロモーション上の観点を重視し、ホンダのNSXコンセプトでのスーパーGT出場のため、DTMとの交渉の末“JAF-GT500”車両として規則を策定。ミッドシップとしての出場が決まった。
ただ、市販車同様のミッドシップレイアウト、ハイブリッド使用は他の2車種とは異なることから、GTAでは独自の性能調整を実施。ハイブリッドシステム分の70kgが重量に追加されるほか、ハイブリッドのアシストはエンジン回転数7500回転以上でしか使用できないなど、決定的なアドバンテージにならないような調整が為されている。
そんな中、FR用のモノコックや共通パーツを使用しながら、ホンダ開発陣がミッドシップ車両として製作したNSXコンセプト-GTだが、第1戦岡山こそライバルたちとレースを戦うことができていたが、第2戦富士の予選では、Q1にエース級のドライバーを投入しながら首位に対し1秒の差をつけられ、5台全車がQ1脱落。15台のGT500クラスで10番手~15番手という結果となった。
さらに、決勝レースでもホンダNSXコンセプト-GT勢は2周でKEIHIN NSX CONCEPT-GTがピットへ。他のNSXコンセプト-GTは他のGT500車両から1~2秒ほど遅いラップタイムで周回を重ねていったが、Epson NSX CONCEPT-GT、ARTA NSX CONCEPT-GT、RAYBRIG NSX CONCEPT-GTと次々にトラブルが発生。ピットで処置を行い走行を続けていたが、ARTAとRAYBRIGが42周で、Epsonは56周でリタイアを喫した。
NSX勢は18周目に発生したS Road MOLA GT-Rの火災によるセーフティカーのタイミングで1回目のピットインを行っており、トラブルが出ていなかったウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GTが他車のピットインのタイミングで暫定的に首位に浮上した。しかし、その後迫るライバルたちに為すすべ無くかわされてしまう。
そんなウイダーも、最終的には他の4台と同様トラブルが発生。とは言えS Roadがリタイアしていたことから、完走すれば1ポイントが獲得できる。なんとか修理を行いながら走行を続けたウイダーは、15周遅れの10位でチェッカーを受けた。
今回の富士戦について、松本雅彦ホンダGTプロジェクトリーダーは「5台中4台がリタイアに終わるという、非常に残念な結果に終わりました」と語る。
「今回起こった電気系トラブルは熱害が引き金になったもので、レース前に発生が予想されたため、事前にできる対策を施してからスタートしましたが、長距離レースという過酷な条件の中でこれらを完全に克服することができず、リタイアを余儀なくされました」
今季からGT500クラスでは2リッター直4直噴ターボエンジンが採用されているが、その熱対策は3メーカーともかなり苦労を重ねていた。とは言え、ミッドシップでは正面から空気を取り入れることは難しく、今季の規定では、いわゆる“デザインライン”から上は市販車の車両外観を保たなければならない。
また決勝ペースについては「やはりライバルよりも最低重量が70kg重いことが影響しています。この点はレギュレーションの関係もあって、ただちに対策を施すのは困難ですが、一日も早くしっかりとしたレースが戦えるよう、引き続き性能と信頼性の改善に努めていくつもりです」という。
ただ、エンジンについてはスーパーフォーミュラでもトヨタ勢に後れを取っており、複数のドライバーもエンジンをはじめ、さまざまな部分に厳しいコメントを残した。「これが現実。このクルマに乗りだしてから決して順調とは言えない。岡山では何台か予選でいいパフォーマンスをみせられたりはしましたけど、今の実力を露呈したと思います」とあるホンダGT500ドライバー。
「エンジンもキツいし、全体です。それがなければこの差にはならない。それにホンダエンジンが最強だったのはセナプロ時代までの話。過去の栄光は捨てた方がいい」
ハイブリッドユニットの70kgの重量や、車両のレイアウト以外にもNSXコンセプト-GTには何かしらの問題がありそうな感がある。また、熱害についてはこれからの暑い時期、再び問題になる可能性もある。あえて“茨の道”を歩んでいるホンダだが、やはりスーパーGTは三つ巴の戦いが展開されることこそ魅力。一刻も早い戦力アップを願うばかりだ。