トップへ

彼女名義の「クレジットカード」彼氏が使ってサインしたら「詐欺罪」になる?

2014年05月05日 14:20  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

東京都内在住のOさん(35)は先日、友人カップルと遊んでいるときに、自分の常識から外れた行為を目撃した。


【関連記事:もし痴漢に間違われたら「駅事務室には行くな」 弁護士が教える実践的「防御法」】



それは、カップル宅で夕食の準備をするために、3人で近所のスーパーに買い物に出かけたときのことだ。レジで会計をするとき、カップルの彼氏は「彼女名義」のクレジットカードを使い、しかも彼女の名前をサインして、支払いを済ませたのだ。



びっくりしたOさんが聞いたところ、カップルの彼女はカードポイントを集める「ポイントマニア」だったのだ。そのため、2人の買い物では、いつも彼女のカードを利用している。その延長で、彼氏が彼女名義のクレジットカードで買物を代行したり、ときにはサインを代筆することもあるという。



カードの契約者である彼女自身が承諾しているとはいえ、このようなクレジットカードの使い方は、カード会社との関係で、法律的に問題ないのだろうか。須山幸一郎弁護士に聞いた。



●カード会社の規約で「他人使用」は禁じられている


「クレジットカードは通常、カード会社の規約や約款において、他人に使用させることは禁止されています」



と須山弁護士は言う。クレジットカードを使うことができるのは契約者本人だけ、というのが原則だ。



「家族で買い物をしているとき、夫や妻に『このカードで支払いをしておいて』と言って自分のクレジットカードを渡した経験がある方もいらっしゃるかもしれません。



しかし、恋人はもちろん、家族であっても、配偶者や子どもに自分名義のカードを使用させることは、カード会社との関係で『不正使用』となります」



不正使用がバレて問題とされたら、カードの返還を求められたり、利用停止になってもおかしくない。



●「詐欺罪」に問われる可能性もある


さらに、須山弁護士は次のようにクギをさす。



「厳密に言うと、犯罪になる可能性があります」



民事上の契約違反だけでなく、刑法上の犯罪となってしまう可能性もあるというから穏やかではない。こんな判例がある。



「他人のクレジットカードを使ってガソリンスタンドで給油したという事件で、最高裁は次のように述べています。



『本件クレジットカードの名義人本人に成り済まし、同カードの正当な利用権限がないのにこれがあるように装い、その旨従業員を誤信させてガソリンの交付を受けたことが認められるから、被告人の行為は詐欺罪を構成する』



平成16年2月9日の最高裁決定で、このように判断されているのです」



他人のカードを使って商品を買うと、その商品を「詐欺」でだまし取ったことになるというのだ。



「加盟店は後にカード会社から支払を受けられるから、実質的に損害がないのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。



しかし詐欺罪は、だまし取られた『その物』、つまりこのケースでいうと『ガソリン』を損害と考えますので、店が後でカード会社から支払いを受けられたとしても、詐欺罪の成立とは関係がないのです」



このように須山弁護士は述べる。



「しかも、この最高裁決定によると、他人名義のカードを無断で使った場合だけが、問題になるのではありません。カードの名義人から使用を許され、利用代金が名義人によって決済されると誤信していたという事情があったとしても、詐欺罪の成立は左右されない、とされているのです」



カップル同士で承諾したうえで、彼氏が彼女のカードを使った場合も、詐欺罪とされる可能性があるということだ。



「最近は、インターネットショッピングなどで、カード決済する機会も多くなっていますので、あらゆる場合に詐欺罪が成立すると考えるべきか、疑問がないわけではありません。しかし、読者のみなさんは、自分名義のカードを他人に利用させたり、他人のカードを利用したりしないように注意したほうがいいでしょう」



須山弁護士はこうアドバイスしていた。当然といえば当然だが、クレジットでのショッピングは自分のカードで決済すべきなのだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
須山 幸一郎(すやま・こういちろう)弁護士
2002年弁護士登録。兵庫県弁護士会。神戸家裁非常勤裁判官(家事調停官)。三宮の旧居留地に事務所を構え、主に一般市民の方を対象に、法律相談(離婚・男女問題、相続・遺言・遺産分割、借金問題・債務整理等)を行っている。
事務所名:かがやき法律事務所
事務所URL:http://www.kagayaki-law.jp/