2014年04月30日 11:30 弁護士ドットコム
名古屋市内のスターバックスに爆竹を投げ込み、バチバチとはじける様子をインターネットの動画サイトで生中継――。そんな呆れた行動に出た20代の男2人組が4月上旬、ネットで問題になり、警察の取調べを受けた。
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ネットで拡散した動画を見ると、視聴者からは「景気よくいこう」「すぐ逃げればいいじゃん」といったコメントも寄せられていたようだ。動画には、男たちが爆竹を店に投げ入れた後、寄せられたコメントを楽しげに読み上げる様子も収められていた。
彼らの様子を見ていると、コメントが犯罪行為をあおっている、という側面もありそうだが・・・。一般論として、こうしたコメントを書き込んだ視聴者が、何らかの罪に問われることはあるのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
「まず、営業中のカフェに爆竹を投げ込む行為は、威力業務妨害罪にあたります。問題は、そのような行為をあおるコメントを書き込むことが、この犯罪の『ほう助犯』にあたるかどうかです」
このように伊藤弁護士は切り出した。「ほう助犯」とはなんだろう?
「ほう助犯とは、その犯罪を自ら実行するのではなく、何らかの方法で、正犯の犯行(実行行為)を容易にさせることをいいます」
この「正犯」とは、その犯罪行為をした人のことだ。
「ほう助行為は、物理的に容易にさせるだけでなく、心理的に容易にさせることも含まれます。
したがって、今回のようなコメント方式での書き込みも、威力業務妨害罪のほう助犯にあたる可能性はあります」
すると・・・書き込みをした人が処罰される可能性もある?
「もっとも、こうしたほう助犯を、現実に犯罪として立件できるかというと、それほど簡単な話ではありません」
どういうことだろうか。
「この男たちは、たしかに視聴者からのコメントを期待して、注目を集めるような行為をしたのだろうと考えられます。
しかし、彼らが個々のコメントに勇気づけられ、それによって犯行が容易になったとまでいえるか、難しいところがあります。
また、コメントをした人が、この男たちの行為について、どこまで認識をしていたかという問題もあります」
そのあたりが明らかになっていないと、実際にほう助犯だとして責任を問うのは難しいようだ。
「そうですね。ほう助犯は、その性質上、どこまでも処罰範囲が拡大されてしまうおそれがあります。そこで、現実に処罰されるのは、よほど悪質なケースに限られる傾向にあるのです。
なお、威力業務妨害の実行行為が終わったあとに、賞賛するようなコメントをしても、ほう助犯にはなりません。犯行後に『犯行を容易にする』ことはできないからです」
それでは、あおるようなコメントは法的には問題ない?
「いいえ、犯行をあおるのはよくないことです。犯罪として処罰されるかどうかにかかわらず、無責任なコメントが、過激な行為を助長するという側面はあります。また、場合によっては、あおった人が民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります」
このように伊藤弁護士は指摘し、安易なコメントに警鐘を鳴らしていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/