2014年04月29日 15:50 弁護士ドットコム
最近、ニュースなどでよく耳にするようになった「タックスヘイブン」。英語を直訳すると「租税からの避難地」となる。その国・地域に籍を置く法人や個人に対して、所得税や法人税などを大幅に軽減したり、無税にしたりする国・地域を指す言葉だ。
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税金を安く抑えたい人たちにとっては、まさに「避難地」と言える。カリブ海周辺のパナマやケイマン諸島、バージン諸島などが世界的にタックスヘイブンとして知られている。
このタックスヘイブンとは、そもそもどうやって生まれたのだろうか。また、最近では自国の企業や富裕層からの税収が減ることを懸念した先進国や国際機関が、タックスヘイブン対策に乗り出したとも聞く。具体的にどういった動きがあるのだろうか。鈴木康支税理士に聞いた。
「タックスヘイブン政策をとっているのは、そのほとんどが、自国の産業を持たない小さな島国です。税金を安くして国際貿易の拠点となり、定期的に外国船が訪れるようにすることで、外貨を獲得することが、タックスヘイブンのもともとの狙いです」
このように鈴木税理士は述べる。
「たとえば、パナマは税金を安くすることで、海運業を盛んにして利を得ています」
だが、タックスヘイブンには問題もあるという。
「今は、マネーロンダリングや企業・富裕層の租税回避に使われるケースが増え、先進国や国際機関の間で問題視されています。
ケイマン諸島やクック諸島などは、パナマのように国際貿易の拠点となるためではなく、外国企業の資産を呼び込むためにタックスヘイブン政策をとっています。
このため、多くの海外企業が税金を減らすため、こういった税率の低い国に会社を設立しています」
では、先進国や国際機関が企業や富裕層の租税回避を防ぐには、どうすればよいのだろうか。
「まずは、タックスヘイブンの国々から情報を収集することが大事です。どのような企業があり、その銀行口座にどのようにお金が流れているのかを把握できなければ、課税のしようがありませんから。
そこで、経済協力開発機構(OECD)は、各国の税務当局が銀行口座の名義人や残高、入金記録などをオンラインで定期的に情報交換するための国際基準を作り、新たに導入することを目指しています」
こう鈴木税理士は説明する。だが、先進国がそのような対策をしても「万全ではないだろう」と指摘している。
「公開された情報をもとに、先進国がタックスヘイブンに口座をもつ企業や富裕層への課税を強化すれば、ケイマン諸島やクック諸島などのタックスヘイブンの国に、会社や口座を作るメリットがなくなってしまいます。そのため、タックスヘイブンの国々がすんなり協力するのを期待するのは、難しいのではないでしょうか」
【取材協力税理士】
鈴木 康支(すずき・やすし)税理士
高田馬場で開業。元NHK文化センタ-・元ペットシッタ-講師。「税理」・「人材確保と多角化経営(同文社)」執筆。「介護の特化」DVD。税理士しゃべり場の会幹事。
事務所名 :鈴木康支税理士事務所
事務所URL:http://www.suzuki-ac.com/index.html
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