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就活生の進路をはばむ「学歴フィルター」 企業の門前払いは「違法」でないのか?

2014年04月29日 11:01  弁護士ドットコム

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来春卒業する大学生の就職活動が本格化しているが、いわゆる「学歴フィルター」に進路をはばまれている学生も少なくないようだ。学歴フィルターとは、企業の説明会などの際に、学生が在籍する大学によって差をもうけることを指す。企業が公式に認めているわけではないが、学生のあいだでは常識といってよい。


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朝日新聞の記事によると、ある学生が志望企業の説明会に申し込もうと、スマホで採用ページを開いたところ、すべての日程が「満席」と表示されたのだという。「いくらなんでも早すぎる」と疑問に思った彼女が、別の大学の友人に問い合わせると「満席になっていない」と言われたそうだ。



学歴フィルターに対して、ネット上では「学歴は本人の努力の結果だから、企業が考慮して当然」という意見がある一方、見えないところで門前払いする方法に対して「アンフェアだ」と批判する声もある。はたして、「学歴フィルター」を通した企業の採用方法は、法的に問題ないのだろうか。労働問題にくわしい山田長正弁護士に聞いた。



●企業には「採用の自由」が認められている


「結論として、違法ではないと考えられます」



このように山田弁護士は明快に答えた。だが、大学名だけで門前払いするのは、公正と言えないのでは?



「たしかに、『学歴』のみで特定の応募者の機会を奪ってしまうことは、差別のようにも思われます。公正な採用選考という観点でいうと、『性別』での差別を禁止する男女雇用機会均等法や、『年齢』制限を禁止する雇用対策法などの各種規制がありますから、『学歴フィルター』も許されないのではないか、と考える人がいてもおかしくありません」



学歴は、こうした法律の規制対象には入らないのだろうか。




「企業には『経済活動の自由(憲法22条および29条)』が認められています。最高裁判決では、これを根拠に、企業の『採用の自由』を広く認めています(三菱樹脂事件・昭和48年12月12日判決)。そのため、採用時の学歴による選別が、違法になるとは考えられないのです」



●学歴は「能力や適性につながる重要な情報」


企業は採用時に、入社希望者の出生地の調査や思想信条の調査が禁じられている。これと「学歴フィルター」はどう違うのだろう。



「厚生労働省は、採用選考時に企業が配慮すべき点として、出生地や家庭環境など本人に責任のない事項を把握したり、宗教活動や社会運動など個人の自由にまかせられるべき事項を把握することを、差し控えるべきだと示しています。



というのも、これらを実施すると、適性や能力に関係がない事項によって、その応募者を差別することにつながりかねないためです。しかし、この厚労省のガイドラインにも、『学歴』について把握することを禁止する旨の記載はありません」



それはなぜだろうか。



「学歴は、能力や適性につながる重要な情報だと考えられているためです。したがって、『学歴フィルター』を活用すること自体は、違法とはなりません」



こう結論を述べたうえで、山田弁護士は次のように付け加えていた。



「学歴を選考のための資料とすることは違法ではありませんが、企業も応募者をないがしろにしたと受け止められると、企業イメージを損なう可能性があります。したがって、極力、疑念を持たれない対応をするほうが良いでしょう」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/