2014年04月28日 12:10 弁護士ドットコム
ペダルをこがなくても進む「フル電動自転車」が徐々に広まっている。運転者がペダルをこがないと進まない「電動アシスト自転車」と違い、フル電動自転車は自動で進むのが特徴だ。まだ街で見かける機会は少ないが、国内でも販売が始まっているという。
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しかしこのフル電動自転車、注意したいのは、乗車時に運転免許証の携帯とナンバープレートの設置が必要という点だ。たしかに自動で動いて、スピードもかなり出るとあれば、免許が必要なのもうなずける。だが、「ペダルをこいで乗っている場合は電動アシスト自転車と変わらないのではないか」「法定速度はどうなるのか」といった疑問も残る。
なにかとややこしそうな「フル電動自転車」だが、通常の「自転車」や「電動アシスト自転車」の違いは、どこにあるのか。速度制限や乗車時の義務など、道路交通法上の扱いは、どうなっているのか。交通問題にくわしい前島申長弁護士に聞いた。
「電動で自走する機能を備え、電動のみでも運転できるフル電動自転車(ペダル付電動自転車)は、人力を電気動力で補助する電動アシスト自転車(駆動補助機付自転車)や普通の自転車とは、まったくの別物です」
法律上の規制は?
「フル電動自転車は、道路交通法上の『原動機付自転車』にあたります。したがって、公道上で使用するためには、次のような要件を満たす必要があります。
(1)原動機付自転車の運転免許証の携帯
(2)前照灯、制御灯、方向指示器、ナンバープレートなどの装備の具備
(3)自賠責保険への加入
(4)ヘルメットの着用」
法律の区分としては、いわゆる「原付」とみなされるわけだ。
「原動機付自転車ですから、(1)~(4)の要件を満たさずに公道を走行した場合は、道路交通法違反に問われることになります」
フル電動自転車は、自分の力でペダルをこいで、モーターをまったく使わずに動かすこともできるようだが、その場合はどうなるのだろうか?
「電動モーターを作動させず、人力だけで走行していた場合でも、フル電動自転車は、原動機付き自転車として扱われます。また、人力と電動モーターを併用するアシストモードでも同じです。
こういった使い方は、ペダル付電動自転車の本来の使い方として、道路交通法上でいう原動機付自転車の『運転』に該当するからです。
走行速度に関しても、他の原動機付自転車と同じく、『時速30km』が制限速度となります」
一見すると、フル電動自転車は、電動アシスト自転車とよく似ているが、法律上はまったく別物ということだ。購入や使用の際は、その点に気をつけたほうがいいだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・労災事故などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。交通事故については、被害者側の損害賠償請求の他に加害者側の示談交渉・刑事弁護も扱う。
事務所名:前島綜合法律事務所
事務所URL:http://maeshima.lawer.jp/