2014年04月26日 15:30 弁護士ドットコム
4月に入り、来春卒業予定の学生たちの就職活動は明暗が分かれてきたようだ。すでに企業から内定や内々定をいくつも獲得した学生がいる一方で、不採用を告げるメールばかり受け取って、意気消沈している学生もいる。
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企業から不採用の知らせがあるとき、その具体的な理由を教えてくれるケースはまれだろう。ほとんどの場合、形式的で無味乾燥な文面のメールが送られてくるだけだ。不合格者には連絡が来ないこともザラにある。
だが、採用されなかった学生にとって、「なぜダメだったのか」は一番聞きたいところのはず。不採用の理由を聞く権利ぐらい、就活生に認めてもいいのではないか。企業法務にくわしい高島秀行弁護士に聞いた。
「契約締結の自由は、企業を含め、世の中の誰にでも認められています。したがって、企業が誰と労働契約を締結するかどうかも、原則的には自由なのです」
このように高島弁護士は説明する。
「法律等がない限り、企業には、誰を採用し、誰を不採用とするか、そして、どういう理由で採用したり、採用しなかったりするか、自由に決められる権利があるのです」
男女雇用機会均等法や労働法などの法律による制限はあるものの、「どの人物を採用するか」については、企業側に「採用の自由」が広く認められているようだ。
では、就活生の「不採用理由を聞く権利」はどうなのか。
「企業は権利の行使として不採用にしたわけですから、不採用理由について、第三者が何か言えるわけではありません。
企業には、どういう理由で採用しなかったのかという『不採用理由』を開示する義務はありません。就活生にも、不採用の理由を聞く権利はありません」
このように高島弁護士は述べるが、次のように補足する。
「ちなみに、不採用の理由を聞く権利がないということは、『不採用の理由を聞いてはいけない』ということではありません。聞いても相手企業に回答する義務がない場合を、法律上は『聞く権利がない』と言います。その点は、誤解のないようにしてください」
このような意味の「不採用の理由を聞く権利」は、残念ながら、学生に認められているわけではないようだ。
「ただ、労働契約締結の自由は就活生の側にもあります。つまり、就活生には、個人情報を開示しないとか、そもそも応募をしないという権利が認められています」
たしかに、その通りだろうが、だからといって、「不採用理由を教えてくれないなら、自分が志望する企業であっても応募しない」という学生はまれだろう。それよりも、なんとか採用してもらえるように、いろいろ工夫したほうが生産的だといえそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
高島 秀行(たかしま・ひでゆき)弁護士
「ビジネス弁護士2011」(日経BP社)にも掲載され、「企業のための民暴撃退マニュアル」「訴えられたらどうする」「相続遺産分割する前に読む本」(以上、税務経理協会)等の著作がある。ブログ「資産を守り残す法律」を連載中。http://takashimalawoffice.blog.fc2.com/
事務所名:高島総合法律事務所
事務所URL:http://www.takashimalaw.com