一見、本物のクマと見まがうほど精巧なつくりのこちらの寝袋「The Great Sleeping Bear(グレート・スリーピング・ベア)」。奈良県出身で現在はアムステルダムを拠点に活動するeiko ishizawaさんによる作品で、2006年にドイツ・バイエルンで起こったクマ殺害のニュースからヒントを得て制作されている。
そのニュースというのは、野生のクマが、イタリア側のアルプス山脈からドイツ・バイエルン側に逃げてきたというもの。170年ぶりに初めて見つかった野生のクマを、殺すか、それとも生かして自然に戻すかどうか、人々と政府の間で膨大な議論を引き起こした。
結局クマは無事に戻されることはなかったのだが、「国境を越えた」という偶然の出来事が多くの人を巻き込み、意見の対立や感情を生み出す結果に。この一連の悲劇に興味を持ち、制作された190cm×73cm×78cmの大きな作品は、事件を象徴化し、あえてアウトドアで欠かせない寝袋として昇華させることで、独特のシュールさとユーモアで見る人の感情に訴えかけている。
リアリティーを追及するため、フェイクファーを中心に、ゴムやジッパー、ガラス玉、テキスタイルを取り入れていることにも注目だ。
「The Great Sleeping Bear」は、わずかながら毎年制作が継続されているそう。山や公共の場所での使用は身の危険を伴うのでおすすめしないが、興味がある人は公式サイトから問い合わせをしてみては。
eiko ishizawa
http://eikoishizawa.com/index.php?/project/the-great-sleeping-bear/