2014年04月11日 12:10 弁護士ドットコム
部屋に「置いておくだけ」で、周りの空気中に含まれるウイルスや菌を除去できる――。このようなうたい文句に引かれて、この冬、二酸化塩素を使った「空間除菌グッズ」を購入した人もいるかもしれない。
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ところが消費者庁は3月下旬、こうした空間除菌グッズを販売していた製薬会社など17社に対し、景品表示法に基づいて、表示変更を求める措置命令をおこなった。同庁によると、商品から放出される二酸化塩素そのものには除菌効果があるものの、生活空間を除菌する効果を裏付ける合理的根拠が示されなかったという。
対象となったのは、大幸薬品の「クレベリンゲル」や中京医薬品の「クイックシールド エアーマスク」など25商品。17社は自社のウェブサイトなどで、二酸化塩素を利用して、生活空間を除菌する効果があるという記載をおこなっていた。
今回、消費者庁は「表示変更」を求める命令をしたわけだが、表示されていた通りの効果を信じて、空間除菌グッズを購入した消費者はどうなるのだろうか。製薬会社側に対して、返金を求めることはできるだろうか。消費者問題にくわしい石川直基弁護士に聞いた。
「法的に整理しますと、消費者が商品の代金を支払ったのは、製薬会社ではなく小売店ですので、代金返還を請求するとすれば、小売店となります」
小売店は、単に卸してもらった商品を売っただけで、責任はないようにも思うが・・・。
「そうですね。ただ、売主には『瑕疵(かし)担保責任』があります。『瑕疵』とは商品に通常あるいは契約上あるとされる品質・性能を欠いていることです。商品に隠れた欠陥がある場合、売主に過失がなくても、損害賠償請求が認められるのです。さらに、契約の目的を達成できない場合は、契約を解除できるというものです」
消費者庁に効果がないと判断された空間除菌グッズも、その「瑕疵」があるということだろうか。
「はい。購入した商品には、空間除菌効果があるとされていましたね。しかし、その効果がなかったということになれば、あるとされる品質・性能を欠いていることになり、『瑕疵』があるといえます。この場合、瑕疵担保責任に基づいて契約を解除し、代金の返還を請求できるでしょう」
では、製薬会社に直接請求することはできるだろうか。
「直接請求となると、不法行為に基づく損害賠償請求が考えられますね。今回の行政処分のような場合は、優良誤認表示をしたことに過失がなくても、製薬会社は処分を受けることになります。しかし、いざ消費者が損害賠償を請求し、賠償金を受けとるためには、製薬会社側に過失があることが条件となってきます」
過失の認定は簡単にできるのだろうか。
「簡単というわけにはいかないでしょう。製薬会社の言い分では、空間除菌の効果があることを示す資料をもっているとのことです。これは今回、消費者庁から合理的根拠となる資料とは認められませんでしたが、この資料の評価しだいで、賠償請求が認められるかどうかが決まるでしょう」
実際には、1000円ほどの商品のために賠償請求するのは、手間ばかりかかって割が合わないかもしれない。そうなると、効果を信じて買った消費者が気の毒だ。製薬会社には、誠実な広告表示をしてほしいものだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
石川 直基(いしかわ・なおき)弁護士
1998年弁護士登録。民事・商事・家事・行政・刑事各分野を取り扱うほか、雪印乳業食中毒事件、茶のしずく石鹸事件などの消費者製品被害弁護団に参加し、2010年6月からは日弁連消費者問題対策委員会副委員長として食品安全・表示問題に取り組んでいる。
事務所名:米田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yoneda-law.com/