2014年04月10日 21:00 弁護士ドットコム
夫とは同じ墓に入りたくない――。そんな心の叫びを持つ妻たちは、どうやらかなり多いようだ。NHKの情報番組「あさイチ」が、全国の既婚女性1488人に「夫の墓に入りたいか?」というアンケートをおこなったところ、およそ6割が「いいえ」と回答した。
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その理由は、「知らない先祖代々と一緒は嫌」(39.9%)、「遠い・ゆかりのない土地にある」(32.3%)「夫の家族が嫌い」(30.7%)などだったという。
大阪府に住む女性Kさん(30代)も、自分の実家の墓に入ることを希望している。「地方出身の夫が継ぐ墓は、私にとっては知らない土地に知らないご先祖さま。自分が夫より先に亡くなった場合のことを考えると気が重いんです」
そもそも、結婚して妻となった女性は、夫と同じ墓に入るものと法律で定められているのだろうか。Kさんが望むように、自分の実家の墓に入ることはできるのだろうか。平田厚弁護士に聞いた。
「夫と同じお墓に入らなければならない法的義務は一切ありません」
平田弁護士はそう断言する。
「夫婦でいる間は、同居義務がありますが、それは生きているうちだけのことで、亡くなってしまったら何の法的義務もありません。したがって、自分のお墓は自分で決めていいのです」
どうやら、妻は夫と一緒の墓に入らなければならない、という法律はないようだ。しかし、Kさんの希望のように「実家のお墓」に入れるかというと、必ずしもそうとは言い切れない。
「お墓を使用する権限は、そのお墓に関する『祭祀承継者』にあるとされています。実家のお墓に入るためには、実家のお墓の祭祀承継者(通常は墓地使用契約の名義人)が承諾しなければなりません」
実家の「祭祀承継者」、つまり、お墓に関して「跡を継いだ人」の承諾が必要になるのだ。そのほか、お寺など墓地の管理者側の受け入れ姿勢も問題となる。
「お墓によっては、墓地の管理者が、管理規則によってお墓に入れる人の範囲を制限している場合もあります。『他宗教の人の遺骨は埋蔵させません』という規則から、『他宗教の人の遺骨も埋蔵できますが、祭祀は仏教式しか行えません』という規則まで、さまざまなものがあるようです」
では、実家のお墓の関係者の承諾が得られなかったり、宗教上の理由などで実家のお墓にも入りたくないときは、どうしたらいいのか?
「夫の実家や自分の実家のお墓に入らない場合、自分の死後に関する祭祀承継者を確保できないこともありえます。そのような場合は、永代供養墓を自分で選んでおくという方法もありますね」
自分用のお墓を購入するなどして、あらかじめ確保しておくというわけだ。
近ごろ、人生の終末に備えた「終活」が注目を集めている。もし誰かと一緒の墓には入りたくないという希望があるようなら、終活の一環として、自分のための「お墓探し」に取り組んでみてもよさそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
平田 厚(ひらた・あつし)弁護士
東京大学卒業。明治大学法科大学院専任教授。近著に、『親権と子どもの福祉』(明石書店)、『虐待と親子の文学史』(論創社)、『権利擁護と福祉実践活動』(明石書店)、『建築請負契約の法理』(成文堂)など。
事務所名:日比谷南法律事務所
事務所URL:http://www.hmlo.jp/index.html