2014年04月10日 18:01 弁護士ドットコム
ベビーシッターの「マッチングサイト」を介して預けられた2歳の男児が、遺体で発見されるという痛ましい事件がおきた。これをきっかけに、ベビーシッターのサイトに注目が集まっている。
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最近は日本でもベビーシッターの利用が進んでいるが、特に都市部では、簡単にシッターが探せるサイトのニーズは強い。マッチングサイトを見ると、「生後3カ月の女の子を週3日、シッターしてくださる方を探しています」「子どもが大好きです。子育て経験あり 1時間1000円~」など、さまざまな投稿がされている。
一方、こうしたサイトにシッターとして登録するのは簡単で、資格不問、料金設定や保険加入も個人任せ、というケースが多いようだ。なかには「当事者間のトラブルには一切関与しない」と明言しているサイトもある。
万が一「トラブル」がおきたとき、ベビーシッターと利用者を橋渡ししたマッチングサイトに、法的責任は生じないのだろうか。消費者契約法にくわしい上田孝治弁護士に聞いた。
「ベビーシッターのマッチングサイトの役割は、基本的に、取引の場を提供しているだけで、自らがベビーシッターを紹介したり、派遣したりしているわけではありません。
したがって、マッチングサイトを通じて知り合ったベビーシッターから何らかの被害を受けたとしても、マッチングサイト運営者は、原則として責任を負いません。
これは、インターネットのショッピングモールやオークションサイトと、同じような構図です」
個別の取引について責任を負うのは、あくまでも取引相手であって、サイト運営者が責任を負う形には、基本的になっていないわけだ。
「もっとも、マッチングサイトの運営者は、利用契約に基づいて、サイト利用者に不測の損害を与えないようにすべき契約上の付随義務を負っています。
したがって、特段の事情がある場合には、マッチングサイト運営者の責任が問われることもあるでしょう。
このことは、マッチングサイトの規約に『当事者間のトラブルには一切関与しない』などと記載されていても同じです」
その「特段の事情」とは、どんな場合だろうか?
「たとえば、サイトに登録しているベビーシッターについて、実際の利用者からのクレームが多発していることを運営者が知っていたのに、合理的期間を超えて会員登録を放置した結果、同じような問題が生じて利用者に損害が発生した、といったケースが考えられます」
何かアドバイスはあるだろうか?
「このように、マッチングサイト運営者の責任を問うことができるケースは限られます。したがって、利用者としては、マッチングサイト運営者とベビーシッターが別の当事者であることを、まず理解する必要があります。
また、各マッチングサイトにおけるベビーシッターの登録要件やチェック体制がどうなっているかを比較することも重要と思われます」
上田弁護士はこう指摘する。
結局、マッチングサイトで行われているのは「個人対個人」の取引だから、サイトを利用する保護者の側が、個々のシッターについて具体的に吟味する必要があるということだろう。
また、万一の際に被害に遭うのが子どもだということを考えると、マッチングサイトの運営者も、トラブルの可視化や悪質な登録者の排除など、さまざまな社会的要請を受けていると言えそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/