2014年04月09日 19:00 弁護士ドットコム
寄生虫学などが専門で、自分の腸内でサナダムシを飼うなど、「寄生虫博士」として知られる藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授が、薬事法違反(無許可販売ほう助)の疑いで書類送検された。
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報道によると、藤田名誉教授は2009年6月~13年10月の間、顧問をしていた健康食品会社の栄養補助食品(CBプロポリス粒)について、「がん細胞を死滅させる」などと医学的効能をうたった記事を書き、商品のパンフレットや医療系無料雑誌に掲載されたという。
こうした広告記事は身の回りにあふれているような気もするが、藤田名誉教授の行為はどうして薬事法上、問題とされたのだろうか。また、藤田名誉教授はその後、不起訴(起訴猶予)とされたが、これはどういう意味なのだろうか。薬剤師の資格をもち、薬事法にくわしい赤羽根秀宜弁護士に聞いた。
「藤田名誉教授の書類送検の前に、栄養補助食品(CBプロポリス粒)を販売した健康食品販売会社の社長が薬事法違反で逮捕されています。まず、ここから考えていきましょう」
このように赤羽根弁護士は切り出した。
「薬事法2条1項では、『医薬品』を、日本薬局方(=日本の医薬品の規格基準書)に収められている物の他、疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているもの等、と定義しています」
なにやら難しそうな定義だが・・・
「そうですね。実際に薬効がある医薬品のほかに、薬効のないものを薬として売る際にも、医薬品として薬事法の規制を受けます。たとえば、その物自体に医薬品的な効能効果が全くなくても、『抗がん作用がある』というような医薬品的な効能効果を標ぼうして販売すれば、多くの人が治療などに使われると考えるでしょう。その場合は、結果として『医薬品』にあたるのです」
効果がなくても、「薬」として売っていたら医薬品扱いだなんて、なんだか狐につままれたようだ。
「薬事法の目的は、医薬品を使うことで国民の健康に生じる副作用等の積極的な弊害だけでなく、薬効のない薬を野放しにすることによって、適時適切な医療を受ける機会を失わせてしまうという消極的な弊害も、未然に防止しようとする点にあります。
そのことから、医薬品とは、その成分・形・名前や、表示されている使用目的・効能効果、販売時の演述・宣伝などを総合して、『人や動物の疾病の診断、治療・予防に使用されることが目的だ』と通常、一般人が理解するような物をいいます。
つまり、客観的にみて、薬理作用がある物には限られないのです」
たしかに、今回の健康補助食品は、「がん細胞を死滅させる」と宣伝されて売られた。多くの人が薬と思い込むだろう。
「はい。医薬品扱いとなりますね。ところが、今回は、薬事法の許可なく販売していました。だから、薬事法違反で、販売会社の社長が逮捕されたのです」
では、藤田名誉教授が書類送検されたのは、なぜなのだろうか。
「今回、藤田教授は、健康販売業者が効能効果などを標ぼうしてCBプロポリス粒を販売することを認識、認容していました。そのうえで、同社に解説文などを提供し、実際、その解説文はチラシや雑誌の広告に使われていたようです」
つまり、無許可の販売を助けたということだろうか。
「その通りです。藤田名誉教授は、薬事法違反の手助けをした(無許可販売ほう助)疑いがあるとして書類送検されてしまいました。もっとも、検察官は、犯罪事実は認められるが、反省や犯行の態様等様々な事情から、起訴するまでもないと判断し不起訴(起訴猶予)としたのです」
「がんに効く」とか「必ず痩せる」といったチラシやネット広告は嫌というほど見かけるが、それが違法である可能性もあるというわけだ。消費者は、そのようなことにも注意しておく必要があるのだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
赤羽根 秀宜(あかばね・ひでのり)弁護士
薬剤師。企業法務、一般民事、また、薬剤師としての知識経験をいかして、薬事法・薬剤師法にかかる問題を取り扱う。東京薬科大学非常勤講師。第二東京弁護士会。
事務所名:中外合同法律事務所
事務所URL:http://www.bengo4.com/search/131826/