2014年04月08日 16:40 弁護士ドットコム
英科学誌「ネイチャー」に投稿したSTAP細胞の研究論文について、ねつ造や改ざんという不正行為をおこなったと、理化学研究所(理研)の調査委員会に認定された小保方晴子ユニットリーダーが4月8日、理研に対して不服申立てをおこなった。
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今後は、研究不正に関する理研内部のルール(内規)にしたがって、手続きが進められていくことになるが、その内規をみてみると、小保方リーダーには「大きな壁」があるといえる。不服申立てをしても、それを審査するのは、不正認定をおこなった「調査委員会」となる可能性が大きいのだ。
今回、理研がSTAP論文の不正疑惑について調査を進めるにあたって、手続き上の根拠としていたのは、「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」という理研の内規だ。小保方リーダーの不服申立てについても、この規程にもとづいて審査がおこなわれることになる。
不服申立てに関する条文は、18条と19条の2つだ。そこには、次のように書かれている。
「研究不正を行ったと認定された被通報者又は通報が悪意に基づくものであったと認定された通報者は、通知を受けた日から起算して10日以内に、研究所に対し不服申立てをすることができる」(18条1項)
小保方リーダーは、この条文に記された「研究不正を行ったと認定された被通報者」にあたる。そして、不正認定の「通知」を受けたのが3月31日なので、そこから10日以内、すなわち4月9日までに、「研究所に対して不服申立てをすることができる」というわけだ。
だが、不服申立てができても、安心はできない。続く19条には、次のような定めがあるからだ。
「研究所は、前条第1項の不服申立てを受け付けたときは、特段の事情がない限り当該調査を行った調査委員会に不服申立ての審査を行わせる」(19条1項)
「前項の審査においては、不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、当該通報についての再調査を行うか否かを審査し、その結果を速やかに研究所に報告する」(19条2項)
ここで重要なポイントとなるのは、小保方リーダーの不服申立てを受けて「審査」をおこなうのが、原則として、「当該調査を行った調査委員会」であるという点だ。「特段の事情」がない限りは、小保方リーダーが不正をおこなったと認定した調査委員会自身が、再び審査をおこなうとされているのだ。
4月1日の理研による記者会見でも、コンプライアンス担当の米倉実理事が「現在の体制では、第一次審査をおこなったところがもう一度、再審査をおこなうというのが、現実です」と述べている。
これは、刑事裁判にたとえていうと、第一審の地方裁判所で有罪判決を受けた被告人が、第二審でも再びその地方裁判所で審理を受けるようなものではないか。今回、小保方リーダーが不正行為をおこなったと判断した機関が、「不服申立て」についての審査もおこなうことは、手続き的に問題ないのだろうか。
この点について、4月1日の記者会見で、理研の野依良治理事長は「私は専門的なことはわからないので、検討させていだたきたいとは思います」と答えている。
(弁護士ドットコム トピックス)