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有名人の「コラ画像」を作ってネットで公開したら・・・法的に問題になるの?

2014年04月06日 14:00  弁護士ドットコム

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有名人の写真を面白おかしく加工したコラージュ(コラ画像)は、ネットでよくある遊びのひとつとなっている。題材となるのは、活躍中のスポーツ選手や芸能人、ニュースで話題の人物など、その時々の「旬の人」が選ばれるが、シェフの川越達也さんのように長く人気のケースもあるようだ。


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たとえば、掲示板などに「川越シェフが○○している画像ください」などとお題が出されると、それに触発されたユーザーが、次々とコラージュを作って投稿していく。投稿されるコラ画像は思わずクスリと笑ってしまうようなものも多いが、中には過激だったり、下品だったり、眉をひそめたくなるような場合もある。



川越シェフについては、本人公認のコラ画像コンテストが開かれたこともあるが、なかには、自分のコラ画像が勝手に作られることに気分を悪くしている人もいるかもしれない。もし有名人の写真を使ってコラ画像を作り、ネット上に投稿したら、法律上どのような問題がおこりうるのだろうか。IT関連の法律問題にくわしい石井邦尚弁護士に聞いた。



●「肖像権の侵害」となる可能性が高い


「有名人の写真を使ってコラ画像を作り、ネットで公開した場合、写真に写った有名人等に対する名誉毀損や肖像権侵害、パブリシティ権侵害などが問題となる可能性があります」



このように石井弁護士は説明する。これらの行為はいずれも、損害賠償や差止請求の対象となるという。



「他人の社会的評価を低下させる『名誉毀損』については、刑法上の犯罪としても規定されています。したがって場合によっては、民事訴訟とは別に、犯罪として告発される可能性もあります」



具体的には、どんな風に問題とされるのだろうか。



「有名人の写真を勝手に加工してネットに投稿するというケースについては、肖像権侵害が認められる可能性は高いでしょう。一方で、パブリシティ権侵害や名誉毀損となるかは、写真の使用態様等によります」



その「肖像権」とは何だろうか。



「肖像権は、自分の肖像(容姿)をみだりに他人に撮影されたり、使用されたりしない権利のことです。



画像の撮影・使用が、公共の利害に関する事柄で、公益を図る目的でなされた場合には違法性を欠いて、肖像権侵害とはならないとされていますが、単に写真を面白おかしく加工して皆で楽しむというだけでは、このような例外には該当しないでしょう」



●有名人の「パブリシティ権」とは?


「また、芸能人などの有名人の肖像などには、肖像権だけではなく、パブリシティ権と呼ばれる権利が発生しています。



このパブリシティ権は、『有名人の氏名や肖像のもつ顧客吸引力を、排他的に経済的に利用する権利』です。多くのCMや広告で、芸能人などの有名人の氏名や肖像を利用し、商品の売上アップにつなげています。



また、有名人の写真などを付した商品が、それを付していない普通の商品よりも高く売られるということもよくあります。このような効果を生み出す力が『顧客吸引力』です」



たしかに、人気を売り物にしている芸能人などからみれば、自分の『知名度にただ乗りされた』という形になる場合もありそうだ。



「したがって、肖像等の使用態様などを総合的に考慮して、もっぱら氏名や肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合には、パブリシティ権侵害となります。



コラ画像についても、加工された画像の使用態様等によっては、パブリシティ権侵害となる可能性もあります。



また、直接的に商業利用をしていなくても、たとえば個人的なブログに有名人の写真等を掲載して閲覧者を導いているような場合などであれば、パブリシティ権侵害となることもあり得ます」



●本人が承諾していれば問題ない


ここまでの話からすれば、有名人のコラ画像には問題も多そうだが、どうしてこれほど多くの「コラ画像」が世に流通しているのだろうか。



「肖像権侵害やパブリシティ権侵害、名誉毀損は、本人が承諾をしている場合には問題となりません。本人が笑って受け入れている場合は、暗黙の承諾があったと評価されることがほとんどでしょう。



ただし、このような暗黙の承諾は通常、画像単位のもので、ある加工画像を笑って許していたからといって、別の加工画像まで承諾したことにはなりません。対象者が笑って受け入れてくれているからといって、度を超すことがないよう、注意が必要です」



話題の人物を題材としてコラージュ画像を作る際には、基本的に、笑って許してもらえる範囲内で、節度を持って行うべきと言えそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
石井 邦尚(いしい・くにひさ)弁護士
1972年生まれ。専門は企業法務。小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられず、IT好きがこうじて、IT関連の法務を特に専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。東京大学法学部卒、コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒
事務所名:カクイ法律事務所
事務所URL:http://www.kakuilaw.jp