2014年04月05日 16:20 弁護士ドットコム
「無断駐車禁止!違反した場合は●万円を頂きます」――。飲食店や月極の有料駐車場などで、こうした張り紙や看板を見かけたことはないだろうか。なかには、実際にお金を要求されたことがある人もいるかもしれない。
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インターネットのQ&Aサイトには、「無断駐車したら罰金1万円を支払えと言われた」という内容の相談が寄せられている。相談者はレストランの駐車場に無断駐車した後、別の場所で用事を済まして戻ってきたところ、その店員から1万円を請求されてしまった。駐車場には「罰金1万円」という看板がかかっていたが、気付かなかったという。
たしかに、無断駐車をするほうが悪いのは間違いない。だが、そんな場合でも、土地の所有者や管理者などに張り紙や看板に記載されたお金を支払わなければいけないのだろうか。たとえば、「10万円」と書いてあったら、10万円全額を支払わなければいけないのか。大村真司弁護士に聞いた。
「無断駐車は不法占拠の一種で、法律的には不法行為(民法709条)にあたります。したがって、無断駐車をした人は、『無断駐車によって発生した損害』を請求されることも覚悟しなければなりません」
このように大村弁護士は説明する。では、駐車場の看板に書かれた金額をそのまま払わなければいけないのだろうか。
「いいえ、そうではありません。日本の法律では、賠償請求できる対象は『実際に生じた損害(実損)』に限るとされています」
つまり、看板に「10万円の罰金」と書いてあっても、それがそのまま支払うべき額になるわけではない、ということだ。
「実際には、レストランの駐車場が1区画使えない損害を厳密に算定するのは、非常に難しいでしょう。計算するとしても、駐車料金相当額、あるいは、その車のせいで駐車できなかったお客の売上額など、微々たる金額になるでしょう」
結局のところ、駐車場の所有者や管理者が10万円を請求するためには、10万円分の損害が発生したと示す必要があるということだ。
「一方で、通常の契約では、債務不履行があった場合に備えて、『損害賠償額の予定』の合意をする場合があります」
かみ砕いていうと、約束違反の罰金をあらかじめ決めておくという話で、損害額の計算が複雑な場合などに使われるやり方だという。
「今回のような看板については、これに準じて、考えられるかもしれません。
ただ、そのためには、看板設置者と駐車した人の間に『合意』が成立している必要があります。金額についても、実損をはるかに超える額は公序良俗違反で、無効となります。
ケースバイケースではありますが、短時間の駐車の場合、10万円どころか1万円を請求するのも、かなり難しいでしょうね。つまり、いくら権利者でも不当な利益を得ることはできない、という話です」
よく見かけるこうした看板だが、法的にもすんなりそのまま通用する、とはいかないようだ。大村弁護士はこう結論付ける一方で、運転者に対して次のようにクギを刺していた。
「もちろん、看板に書いてある通りの金額を払わなくてもいいからといって、無断駐車をしていいわけではありません。
さきほど話したとおり、『実損』に対する賠償責任はありますし、モラルの問題もありますので、その点は誤解なきよう・・・」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会委員、広島弁護士会消費者委員会委員、弁護士業務改革委員会副委員長、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員、災害復興ワーキンググループ委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com