2014年04月05日 13:30 弁護士ドットコム
仕事に生活に、なくてはならない携帯電話やスマートフォン。どこにでも持ち歩くものだけに、何かのはずみで「落としてしまう」ことがある。誰かが預かったり、警察に届けたりしてくれれば良いが、手を尽くして探しても見つからないこともあるだろう。
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その携帯が「会社のもの」だった場合、話はさらにややこしくなる。会社から貸与されている携帯となれば、取引先の氏名や電話番号、さらにはメールのやり取りなど、外部に出せない情報も入っているだろう。
個人情報の入った会社携帯をうっかりなくしてしまった場合、従業員が法的ペナルティを課せられる可能性はあるのだろうか。佐久間篤夫護弁士に話を聞いた。
「顧客の個人情報が保存されている会社所有の携帯やスマートフォンの紛失があった場合の法的責任は、次の2つが考えられるでしょう。
(1)紛失した機材に保存されていた『個人情報の本人』に対する責任
(2)機材を紛失した人が所属する『会社』に対する責任」
佐久間弁護士はこのように指摘する。それぞれ、どうなるのだろうか。
「(1)の個人情報の本人に対する責任については、通常は『会社』が負うことになります。
なぜなら、会社がその本人との間の契約により個人情報を預かったにもかかわらず、その契約上の義務に違反して、個人情報を紛失したことになるからです。
したがって、個人情報が悪用されて具体的な損害が発生したような場合には、会社が契約違反による損害賠償責任を負う可能性があります。
また、このような場合、個人情報の本人は機材を紛失した人に対しても、契約関係にはないものの損害賠償責任を追及できる可能性はあります。
ただ、会社が損害賠償に応じれば、従業員個人に対して重ねて損害賠償を請求することはできません」
佐久間弁護士によると、こうした場合は通常、個人ではなくて会社の責任が追及されるということだ。
「次に(2)ですが、機材を紛失した人(従業員)は、会社の資産を紛失したわけですから、理論的には会社に対して、少なくともその機材の価額の損害賠償責任を負う可能性があります。
さらに、会社が個人情報の本人に対して損害賠償に応じた場合は、会社が賠償に応じた分の損害の補てんを求められる可能性もあります。
ただ、会社の規模や機材の価値にもよりますが、こうした場合は、よほどの不注意か悪意をもって紛失した場合でなければ、通常は始末書を書かされる程度で終わることが多いのではないかと思います」
つまり、携帯をなくした従業員個人に対する会社側からの責任追及は、通常は社内的なものにとどまるだろうという見解だ。
「もっとも、パスワードや暗号化の設定など、会社が指示した情報管理方法を守っていなかったために、機材の紛失が、個人情報の本人の具体的な損害発生につながったような場合には、会社側の対応も変わってくる可能性があります」
佐久間弁護士はこのように述べて、会社貸与の携帯電話やスマートフォンの取扱いに気を配るよう注意を呼びかけていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
佐久間 篤夫(さくま・あつお)弁護士
東京弁護士会会員、米国ニューヨーク州弁護士、弁理士、中小企業診断士。企業法務としては経営リスク回避の視点から紛争やトラブルの予防策を重視し、和文・英文契約書の作成や検討、ソフトウェア等の著作権、商標権、模倣品や営業秘密対策、労働問題などを扱う。
事務所名:佐久間総合法律事務所
事務所URL:https://sites.google.com/site/lawmanconsulting/