2014年04月04日 17:20 弁護士ドットコム
「ルパン、逃がさんぞぉ~!」。人気アニメ『ルパン三世』でルパン逮捕に執念を燃やし、ときには主人公を脅かすほどの強烈な存在感を示しているのが銭形警部だ。彼は、日本の警察から「インターポール(国際刑事警察機構・ICPO)」に、ルパン専任の捜査官として出向しているとの設定だ。
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銭形警部は、ひんぱんに「インターポールの銭形です」と名乗っている。このためアニメを通じて同機構の存在を知った人も多いだろう。インターポールは、フランス・リヨンに本部を置き、世界190カ国・地域が参加する国際組織だ。加盟国同士が連携して国際的な犯罪の防止や解決に取り組んでいるという。
実際のところ、インターポールには、銭形警部のように日本の警察組織から出向している人や、捜査官として世界中を飛び回っている人がいるのだろうか。元東京地検特捜部検事で、国際的な刑事事件にもくわしい中村勉弁護士に聞いた。
「インターポールの正式名称は、国際刑事警察機構(International Criminal Police Organization )といいます。世界190カ国が加盟する世界最大の国際刑事警察機関です。
国際犯罪と闘う各国の警察をサポートする役目を担っており、インターポール自体には強大な警察権力はありません」
サポート組織ということは、もしかして、銭形警部のように実際に現場で捜査・逮捕はしないということだろうか。
「はい。銭形警部が手錠を片手に『ルパ~ン、逮捕する!』と叫んでいるシーンをよく見ますが、実際に国際犯罪者を逮捕するのは現地の警察官です」
ということは、インターポールは具体的にどんなことをしているのだろう。
「インターポールの主な活動として次の3つが挙げられます。
(1)国際犯罪及び国際犯罪者に関する情報の収集と交換
(2)犯罪対策のための国際会議の開催
(3)逃亡犯罪人の所在発見と国際手配書の発行」
たしかに、この3つの役割のどこにも、銭形警部のルパン捜査は当てはまらなさそうだ…。
アニメで銭形警部は「警視庁からの出向」という設定になっている。実際にはどうだろう。
「日本では、警察庁がインターポールの構成員です。国際刑事課、国際第二課を経て、2004年の組織犯罪対策部の発足後は、国際捜査管理官がインターポールとの連絡等の事務を扱っています」
こちらも、アニメの設定と違うようだ。でも、実際に日本人はどのように活躍しているのだろう。
「国際犯罪の専門家の育成等を図るため、警察庁は現在、インターポールに5人の職員を派遣しています。1996年には、兼元俊徳さんが日本人として初めてインターポール総裁に就任しました。また、今年の9月に開設が予定されているサイバー犯罪捜査支援を中心とした機関の局長にも、中谷昇さんが就任する予定です」
なんと。日本人総裁までいたとは。
「はい。銭形警部のように、特定の容疑者だけのために世界中を旅している日本人はいないようですが、インターポールで活躍する日本人は実在するのです」
銭形警部のような人がいないのはなんとなく残念だが、実際に日本人が活躍していると聞くと、身近に感じられるから不思議だ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
中村 勉(なかむら・つとむ)弁護士
東京弁護士会所属。元東京地検特捜部検事。中央大学法学部卒業 Columbia Law School卒業(Fulbright留学生) LL.M.(法学修士号)取得
事務所名:弁護士法人中村国際刑事法律事務所
事務所URL:http://www.t-nakamura-law.com