2014年04月02日 16:00 弁護士ドットコム
飲酒運転の疑いがあったにもかかわらず適切な捜査をしなかったとして、愛知県警の男性巡査部長(51)が3月中旬、「犯人隠避」の容疑で書類送検された。
【関連記事:会社が指定した「ミニスカ制服」 女性従業員は「着用」を拒否できるか?】
報道によると、この巡査部長は昨年7月、名古屋市内で物損事故が起きた際、「運転者に飲酒の疑いがある」と報告を受けたにも関わらず、出動しなかった疑い。また、昨年8月に起きた別の交通事故でも、他の警察官に「飲酒検知は必要ない」と指示して、酒気帯び運転容疑の捜査を行わなかった疑いがあるという。
巡査部長はいずれの運転手とも面識はなく、「(運転手が)会社をクビになると、かわいそうだと思った」と話したという。一方、県警は職務を怠けたとみて、巡査部長を減給(10分の1)3カ月の懲戒処分にしている。
今回の送検容疑である「犯人隠避」とは、どのように定義される犯罪で、どんなケースが典型的なのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。
「犯人隠避罪は、刑法103条に『犯人蔵匿罪』と一緒に定められています。
条文では、『罰金以上の刑に当たる罪を犯した者または拘禁中に逃走した者を蔵匿し、または隠避させた者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処せられる』と規定されています。
これはつまり、かくまうなどして、真犯人らの発見を困難にさせる捜査妨害行為を、刑罰をもって禁止しているということです」
「蔵匿」と「隠避」はどう違うのだろうか?
「真犯人らの発見を困難にさせる代表的なケースは、隠れ場所を提供してかくまうことだと思いますが、これは『蔵匿』と呼ばれ、犯人蔵匿罪になります。
これに対して『隠避』とは、それ以外の方法をいいます。つまり、隠れ場所を提供してかくまう『蔵匿』以外の方法で、捜査機関による発見・逮捕を免れさせる場合をさします」
「隠避」とは、たとえばどんな行為なのだろうか。
「具体的に『隠避』にあたるのは、たとえば次のような行為が考えられます。
(1)逃走用の資金や自動車・航空券など逃走手段を提供する
(2)発見を困難にするため変装用具を与えたり、整形手術を施したりする
(3)身代わり犯人を立てたり、自らが身代わり犯人として出頭したりする」
そうすると、適切な捜査を行わなかったことは?
「もし、運転者に飲酒運転の疑いがあるにもかかわらず、警察官がただちにアルコール濃度の検査を実施しなかったのならば、適切な捜査を怠って立件を妨げたとして、『犯人隠避罪』が成立することになると思われます」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
足立 敬太(あだち・けいた)弁護士
北海道・富良野在住。投資被害・消費者事件や農家・農作物関係の事件を中心に刑事弁護分野も取り扱う。「刑事弁護においては、被害者様を含めきめ細やかな対応を目指しています」
事務所名:富良野・凛と法律事務所
事務所URL:http://www.furano-rinto.com/