2014年04月01日 16:00 弁護士ドットコム
STAP論文問題で、理化学研究所(理研)の調査委員会は4月1日、理研発生・再生科学総合研究センターの小保方晴子ユニットリーダーが捏造や改ざんといった「不正」をおこなっていたと認定した。
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一方、論文の共同著者の一人で、小保方リーダーの上司でもある同センターの笹井芳樹副センター長については、「データの正当性等について注意を払わなかったという過失によりこのような捏造を許すこととなった」としつつも、「研究不正行為を行ったわけではない」と結論づけた。
調査委員会の最終報告を受け、理研の野依良治理事長らが謝罪会見を開いた。笹井副センター長は出席しなかったものの、そのコメントを印刷した書類が配布された。その中で、笹井副センター長は、論文に複数の過誤があったことについて「深く遺憾に思っております」と謝罪を表明。研究不正とされたことは「心痛の極み」と述べている。
また、英科学誌「ネイチャー」に掲載されたSTAP細胞の論文で自らが果たした役割については、「既に作成された図表データを元に、文章を書き上げる面で他の共著者に教授・助言をする役割」だったとし、「画像の取り違えやデータの処理上の不適切な過程について気付き、それを事前に正すことには限界があった」などと弁明している。
さらに、小保方リーダーが博士論文から画像を流用したとされる問題をめぐって、笹井副センター長が「隠蔽」を図ったのではないかという指摘が、一部の報道機関から出ていることに対しては、「そう言った事実は一切ない」と否定し、「追加報告する際の不手際」だったと弁解している。
調査委員会報告の概要を受けてのコメント
このたびは、STAP 現象に関する Nature 誌の2つの論文につき、論文構成上の複数の過誤・不備が判明し、多方面への混乱を招きましたことを共著者に加わるものとして心よりお詫び申し上げます。今回の論文が記述した刺激惹起性多能性獲得(STAP)は、これまでの常識を越えた細胞制御の現象の報告であり、生物学的に特別な意味を持つ新原理の提案を含んでいます。こうした大きな結論を導く論文に、図らずも複数の過誤が論文に発見されたことは、深く遺憾に思っております。
調査報告書では、こうしたデータの過誤や不適切な取扱いは科学論文にあるべからざるものでとして厳しいご指摘を受けましたが、6つの項目のうち、4つの項目では故意に間違った結論を誘導するため研究不正とは言えないとの調査の結論を受けました。一方、Article 論文に関する2つの項目では、Figure 1 の PCR のゲル写真の合成のあり方が不適切で改ざんに当たること、Figure 2 の免疫染色の画像の取り違いが捏造の範疇に当たること、という大変厳しい評価を受けました。これらの判断を受けました状況は非常に残念であり、心痛の極みであります。共著者の1人として心よりお詫び申し上げます。
私は、これらの論文においては、既に作成された図表データを元に、文章を書き上げる面で他の共著者に教授・助言をする役割を主に担っており、今回問題となりました図表データの過誤は論文発表前に全く認識せずにおりました。このことには忸怩たる思いでございますが、これらは自らの研究室以外で既に実験され、まとめられていた図表データであり、他の実験結果との整合性が高いものであったため、画像の取り違えやデータの処理上の不適切な過程について気付き、それを事前に正すことには限界がありました。そのため、報告書では、私個人の関与については研究不正を認められないとのご判断を受けました。しかし、報告書にあるように、いかなる場合も実験の詳細に遡った検討の努力を行うべきであり、この点が不足していたとのご指摘は深く反省すべきものとして真摯に受け止めております。また、私を含めた研究経験の長い複数の研究者が共著者にいながら、若手研究者の過誤の予防のための指導を徹底出来なかった点も大変悔やまれます。
なお、Figure 2 の免疫染色の画像の件では、以前に、画像の不正流用の組織的な隠匿などの疑義を問う一部の報道がありましたが、そう言った事実は一切ないことをここに述べさせていただきます。Figure 2 の免疫染色の画像の取り違いの調査委員会への報告の際、私どもの当初の説明に不十分なものがあったとのご指摘も報告書にございましたが、これは自己点検での発見された過誤を追加報告する際の私どもの不手際によるものであり、隠蔽とは次元の異なるものであります。
これまで、STAP 研究関連では、多くのご質問を私にいただきながら調査委員会の開催中であったなどのため、残念ながら大半についてお答えが出来ませんでした。これらの観点から、主だったものに関しては、今後、まとめた形での回答と解説を私のほうから用意することを鋭意検討しておりますので、何卒ご理解いただけますれば幸甚でございます。
刺激惹起性多能性獲得という現象の真偽は、今後の生物学研究に大きな影響をもつものであり、今後、その検証は厳密かつ公正に行うことが必須であると思います。また、理研には、そうした集中的な検証に貢献する責務があると思っております。仮に、今回疑義を生じたデータを除いてみたとしも、その他のデータで刺激惹起性多能性獲得を前提としない説明が容易にできないものがあると私は考えており、理研内外での予断のない再現検証に対して積極的に協力して、真偽の解明に貢献したいと思っております。
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
笹井 芳樹
(弁護士ドットコム トピックス)