2014年03月31日 12:10 弁護士ドットコム
スマートフォンなど携帯端末の普及にともなって、電子書籍が存在感を増している。通勤電車内などで電子書籍を読んでいる人を見かけることも珍しくなくなった。そんな電子書籍を「不正コピー」するソフトウエアを製造した容疑で、このほど逮捕者が出た。
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報道によると、ネットサイト「DMM.com」の電子書籍にかけられた「コピー防止措置」を回避できる機能が、このソフトにはあったという。その機能について、警察は、著作権法違反(技術的保護手段を回避するプログラムの製造)にあたると判断したようだ。
今回の逮捕は、2012年に改正された著作権法の条項が初めて適用されたケースとされている。その条項は、どんな内容なのだろうか。また、ソフトを製造した者だけでなく、購入・利用した人も、何らかの法的責任を問われることになるのだろうか。福島隆弁護士に聞いた。
「販売されている電子書籍の多くには、何らかの不正コピー防止措置(技術的保護手段)が講じられています。
今回問題になったのは、そうした措置を『回避するソフトウエア』を譲渡目的で製造することです。そのような行為は、著作権法120条の2で禁止されています」
それは、2012年に新しくできた条項なのだろうか?
「この条項は2012年以前からありました。ただし、2012年の法改正以前は対象の範囲が狭く、不正コピー防止措置を回避することが、そのソフトや装置の『もっぱらの機能』といえる場合でした。
改正で変わった点は、この『もっぱら』という要件が外れたことです。
つまり、改正前は、多くの機能を備えた装置やソフト等の製造が処罰対象となりにくかったのですが、改正後は、不正コピー防止措置を回避する機能を有してさえいれば、処罰対象にできることが明確になったのです」
電子書籍のコピー防止措置が簡単に解除されてしまえば、電子書籍の販売に悪影響が出る。国としては、そうした事態を防ぐため、法制度を整える必要があったのだろう。
「今回、問題とされたソフトがどのような機能を有していたのかは分かりませんが、2012年の法改正前には処罰できない装置・ソフト等がたくさんあった実情を考えれば、今回のような事例は法改正によって処罰可能となったと考えていいだろうと思います」
では、こうしたソフトを利用した個人が、何らかの法的責任を問われることはあるのだろうか。
「購入しただけならば問題ありませんが、実際にこのようなソフトを使って、不正コピー防止措置を回避し、著作物の複製を行った場合には、たとえ私的利用目的であっても、著作権侵害となります(著作権法30条1項)」
つまり、私的利用のためのコピーは原則として合法とされているのだが、コピー防止措置を回避できるソフトを使って電子書籍をコピーした場合は、例外的に違法となってしまうのだ。
「そのような場合は、権利者から損害賠償を請求される対象になってしまいます」(福島弁護士)ということなので、注意が必要だろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
福島 隆(ふくしま・たかし)弁護士
弁護士法人新さっぽろ総合法律事務所 社員弁護士
札幌市厚別区を中心に白石区、清田区、北広島市など地域の法律問題を多く手掛けている。
事務所名:新さっぽろ総合法律事務所
事務所URL:http://www7.ocn.ne.jp/~shinlaw/