2014年03月30日 17:30 弁護士ドットコム
もうすぐ4月。新卒者の就職活動がいよいよ本格化している。就活生の多くは、自己分析や企業研究などに、真面目に取り組んでいることだろう。ところが、そんな中に、企業が手を焼く「モンスター就活生」が混じっていると話題になっている。
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ここ数年で使われ始めた言葉で、不採用となった企業の悪口をネット上に書き込むなど、好き放題に振る舞う就活生を指すようだ。なかには、面接官や採用担当者の言葉や態度をあげつらって「圧迫面接だ」とか「ブラック企業だ」などと、SNSやネット掲示板に書き込む人もいるという。
具体的な問題点の指摘ならともかく、採用されなかった不満をネット上でぶちまけるのは、企業側にとっても迷惑だろう。就活生のこうした行為は、法的に問題になる場合もあるのだろうか。労働問題にくわしい古金千明弁護士に聞いた。
「たとえば、就活生がSNSやブログ等に企業の社会的評価を下げるような事実を書いたり、『あの企業はブラック企業だ』等と悪口を書いたような場合、書き込んだ内容が客観的な事実であっても、名誉毀損にあたる可能性があります」
このように古金弁護士は説明する。しかし、「一定の要件」を満たせば、そうした表現も違法でなくなる場合があるという。それはどんな要件なのだろうか。
「まず、記事に記載された『事実』が問題とされた場合ですが、(1)その事実が公共の利害に関するもので、(2)記事がもっぱら公益を図る目的のために書かれ、かつ、(3)その記事に記載されている事実が真実である場合、またはそれを真実と信じることについて相当の理由があれば、違法ではなくなります。
また、『論評・意見』が問題となった場合には、(1)(2)に加えて、(A)表現内容が論評・意見としての域を逸脱しておらず、かつ、(B)その論評・意見が前提としている事実が重要な部分について真実である場合、またはそれを真実と信じることについて相当の理由がある場合に、違法ではなくなります」
ざっくりいうと、目的の公益性や内容の真実性などが問題となるようだ。こうした基準からすると、モンスター就活生の書き込みはどうなるのだろうか。
「もちろんケースバイケースですが、不採用となった腹いせに書き込むようなケースでは、(2)の公益目的がないと判断されやすいでしょう。
また、論評・意見でも、過度に攻撃的な表現や人格攻撃などが含まれていれば、(A)の条件を満たさないことが少なくないと思われます。
たとえ一個人の発言でも、SNSやブログ等で大きく広がる時代になりました。就職活動で気に入らないことがあった場合でも、企業や第三者の社会的信用を下げるような発言をネットでするのは慎重にされた方がよいでしょう」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
天水綜合法律事務所・代表弁護士。個人から法人(IPOを目指すベンチャー企業・中小企業、上場企業)に対するリーガルサービスを提供している。取扱分野は、企業法務、労働問題、M&A、倒産・事業再生、会社の支配権争い(攻撃側、防衛側)
事務所名:天水綜合法律事務所