2014年03月26日 19:40 弁護士ドットコム
PC遠隔操作事件で威力業務妨害罪などに問われ、現在、刑事裁判を受けている片山祐輔被告人。昨年2月に逮捕されて以来、1年以上にわたって勾留されていたが、3月5日に保釈された。そのときの記者会見で、「自由というのはまぶしいものだな」と発言し、注目を集めた。
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だが、その保釈は、スムーズに実現したわけではなかった。3月4日に東京高裁が保釈決定をした際には、メディア関係者の間にも「ついに保釈か」という空気が流れたが、検察が粘り腰をみせたのだ。保釈決定に対する異議申立てとして、最高裁への「特別抗告」という手続きをとったうえで、最高裁の判断が出るまで被告人を保釈しないよう、東京高裁に迫ったのだ。
東京高裁は特別抗告を受けて、いったんは「保釈しない」と決定した。しかし、翌5日になってその決定を取り消し、結局、片山被告人を保釈した。なお、最高裁は7日になって、検察の特別抗告を棄却し、高裁の保釈許可が確定している。
なんともややこしいことになったが、そもそも「保釈」とはどういった制度なのだろうか。また、なぜ片山被告人の保釈をめぐる決定は二転三転したのだろうか。元検事として、捜査の内情をよく知る落合洋司弁護士に聞いた。
「保釈は、起訴後に勾留されている被告人の身柄拘束を解く、刑事訴訟法上の制度です。
弁護人などからの請求により行われる場合と、裁判官の職権で行われる場合がありますが、請求に基づく場合がほとんどです」
身柄が解放されるということだが、どういう性質のものなのだろうか。
「保釈許可が出ると、裁判所により一定の金銭納付が命じられ(保釈保証金)、事件関係者との接触禁止などの条件が付されたうえで、一般社会で生活できるようになります。
ただし、保釈はいわゆる『無罪放免』とは違いますので、こうした条件に違反すると保釈が取り消され、保釈保証金の全部または一部が没取されたうえで、収監されることになります。また、後に実刑判決が出れば、収監されることになります。
それでも、被告人にとって身柄の拘束が解かれる利益は大きく、起訴後は強く保釈が求められることになるのが普通です」
保釈の際には、今回のようなすったもんだも、よくあるものなのだろうか?
「PC遠隔操作事件では、第1回公判後、審理を担当する東京地裁が弁護人の保釈請求を却下し、弁護人の抗告を東京高裁が認めたものの、検察官が最高裁判所に特別抗告をしました。
この『特別抗告』は本来、憲法違反や判例違反が理由になるもので、保釈許可に対して検察官が特別抗告するのは極めて異例です」
その時点で、すでに十分異例の展開だったわけだが・・・。さらなるゴタゴタはどうして起きたのだろうか。
「その部分は手続きのミスで、東京高裁がいったん保釈の執行停止を命じたものの、本来は『東京高検』が行うべき特別抗告や執行停止申立を、『東京地検』がミスして行っていたことが後に判明し、執行停止取消、保釈という異例の展開をたどったのです」
なんとも、複雑な事態が起きたと言えそうだが・・・落合弁護士は「事件も特異ですが、被告人の身柄についても、異例の事態が起きたと言えると思います」と振り返っていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所
事務所URL:http://d.hatena.ne.jp/yjochi/