2014年03月24日 13:30 弁護士ドットコム
勤務時間中にパソコンのトランプゲームで遊んでいたとして、東京都多摩市の男性課長(59)が3月上旬、懲戒処分を受けた。
【関連記事:覚せい剤と知らず「運び屋」になってしまった「旅行客」 どんな罪に問われるのか?】
報道によると、この男性課長は2011年4月から今年2月にかけて、毎週数回、1回あたり5分から10分ほど、勤務時間にもかかわらず、パソコンに内蔵されたトランプゲームをしていたという。外部から指摘されて発覚。男性課長は事実関係を認めているようだ。
今回、男性課長は6カ月の減給(10分の1)処分を受けたが、多摩市の条例にある減給処分の中では最も重いそうだ。もし民間企業で同じようなことがあった場合、どんな処分内容が考えられるのだろうか。減給くらいでは済まず、クビになることもありうるのだろうか。原英彰弁護士に聞いた。
「今回のケースの場合、その労働者の職務怠慢や会社のパソコンの私用といった懲戒に該当する理由があることは明らかです。しかし、うっかり重すぎる処分をしてしまうと、裁判で無効になることがあります」
懲戒は、企業の裁量に任されているわけではないのだろうか。
「民間企業の懲戒処分は、『行為の性質及び態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合』には、法律上無効になってしまいます」
「懲戒処分は、よく刑事処分と似ていると言われます。懲戒解雇は、いわば企業からの死刑判決。行為の重大性や企業秩序に対する深刻な悪影響など、かなりの程度の『悪いこと』をした労働者に対してでないと、裁判で無効になることがあります」
そういう観点で見ると、今回のケースはどうだろうか。
「約10カ月にわたって、週数回、1回につき5分から10分ということですので、積算すれば、仕事をさぼっていた時間は相当長くなりますね。とはいえ、積算しなければ、1回につき5分から10分程度のサボりです。この課長の職務遂行に『重大な支障が出た』とまでは、考えられません。
したがって、懲戒解雇することまでは『社会通念上の相当性』が認められないでしょう。ですから、民間企業の場合であっても、クビにはできず、減給処分程度の処分になることが多いと思います」
民間でも公務員でも、最も重い懲戒解雇処分には、慎重な判断が必要なようだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
原 英彰(はら・ひであき)弁護士
企業法務を中心に取扱い、中でも人事労務分野を多く取り扱う。企業側の立場での団体交渉出席の経験が豊富で、平均週1回ペースで出席している。
事務所名:竹林・畑・中川・福島法律事務所
事務所URL:http://www.thnflaw.com/