2014年03月18日 12:00 弁護士ドットコム
「補助犬 同伴可」「welcome! ほじょ犬」。商業施設やレストラン、カフェなどで、こういったステッカーを見かけたことはないだろうか。「補助犬」とは、身体に障害を持つ人の生活をサポートする、特別な訓練を受け、公的に認定された犬のことだ。視覚障害者をサポートする「盲導犬」をはじめ、身体障害者のための「介助犬」、聴覚障害者のための「聴導犬」がいる。
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2002年9月には、こうした補助犬の普及と障害を持つ人の社会参加を後押ししようと、「身体障害者補助犬法」が施行された。補助犬を同伴する人が電車に乗るのを拒否されるなど、当時は社会の理解がまだ不十分だったことが、立法のきっかけだった。
同法により、駅や空港、スーパーなど不特定多数の人が出入りする場所は、補助犬の同伴を受け入れるよう義務付けられた。また、冒頭にあげた「補助犬 同伴可」といったステッカーも、この法律に基づいて作られている。
法律施行から11年余り。はたして、社会は補助犬を自然に受け入れられるように、変化したのだろうか。現状と課題について、この法律にくわしい渡邉正昭弁護士に聞いた。
「2002年施行の身体障害者補助犬法は、わが国で最初の『障害者差別禁止法』です。それ以後、補助犬の普及啓発活動は着実に進み、2013年4月1日現在では、盲導犬1043頭、介助犬67頭、聴導犬52頭が実働しています」
渡邉弁護士によると、補助犬の重要性はしだいに認知されてきているようだ。だが、課題はまだ残っているという。
「課題の一つは、『補助犬の受け入れ拒否』をどう解決するかです。
身体障害者補助犬法9条は、不特定多数の人が利用する施設に対して、補助犬を受け入れる義務があると定めています。
ところがいまでも、病院や飲食店、旅館等といった施設が正当な理由がないのに、受入れを拒否する事例が続発しているのです」
具体的には、どんな事例なのだろうか?
「たとえば、レストランで食事をしようとしたら、『犬嫌いのお客様の迷惑になる』という理由で、補助犬の同伴を断られるというケースです。
また、通院したところ、『他の来院者の迷惑になる』との理由で、補助犬の同伴を断られるケースもあります。
外食や通院などのたびに、障害者から引き離されてしまうのでは、『生きた補装具』としての補助犬の意味がなくなり、補助犬の普及にも大きな障害となります」
そういった事態を解消するための道筋は、どういうものだろうか?
「問題解決には、法律の改正や解釈の明確化、普及啓発活動など、立法や行政の活動も必要でしょうが、それだけでは限界があります。
同時に、補助犬を介して社会と接触する訓練事業者・訓練士や、実際に補助犬を利用する人たちが、情報を共有し、協働することが重要です。
その上で、受け入れ側と良好な人間関係を維持しながら、法律や健康・衛生面などについての客観的な啓発資料を活用して、受け入れ側を説得していく手法も検討すべきだと思います」
渡邉弁護士はこのように指摘していた。
実働数からいって、補助犬を見かける機会は、一般的にはまだまだ少ないだろうが、もしどこかで見かけることがあれば、温かく見守りたいものだ。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
渡邉 正昭(わたなべ・まさあき)弁護士
交渉戦略家。25年以上に亘りペット問題に取り組む。
咬傷事故等のペット問題の相談や事件依頼は日本全国から。セカンドオピニオンや引継依頼も多い。心理学を活用した法的交渉が特徴。(社福)日本介助犬協会監事、(特非)日本介助犬アカデミー理事
事務所名:渡邉アーク総合法律事務所
事務所URL:http://www.watanabe-ark.gr.jp/