2014年03月15日 17:30 弁護士ドットコム
知り合いの少女と性的関係をもった男性に因縁をつけ、現金を要求したとして、宮城県警の巡査部長が恐喝未遂の疑いで逮捕された。
【関連記事:「佐村河内」楽曲の著作権は誰のもの? 「ゴーストライターの著作権」を考える】
報道によると、この巡査部長は昨年10月、スマートフォンのメッセージアプリ「LINE(ライン)」を通じて、当時17歳だった少女と知り合ったという。昨年12月に、少女と男性(20歳)が性的な関係をもったことを知り、男性の家に押しかけて、「お前のやったことは犯罪だ。逮捕されれば50万円から100万円の罰金だ。誠意を見せろ」などと告げた疑いが持たれているという。
ところで、宮城県の青少年健全育成条例によれば、たしかに、18歳未満の青少年との性行為やわいせつ行為を禁じる規定があり、違反すると、2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとされている。つまり、男性が17歳の少女と性的関係をもったならば、処罰される可能性は十分にあったといえるのだ。
このように犯罪をおかしたといえるような人に対して、「誠意を見せろ」と告げたような場合でも、恐喝になってしまうものなのだろうか。高橋善由記弁護士に聞いた。
「恐喝罪は、暴行を加えたり、脅迫したりして相手を怖がらせ、お金などの財産や財産上の利益を得る犯罪です。
俗に『カツアゲ』と呼ばれるなど、それほど重い犯罪とは認識されていないかもしれませんが、法定刑が10年以下の懲役となっており、むしろ重い犯罪の部類に属します」
このように、高橋弁護士は説明する。
「この恐喝罪は、財産犯と言って財産権を侵害する犯罪となりますので、単に相手を怖がらせるようなことを告げるだけでは成立しません。その場合は、脅迫罪の成立が問題となりえます」
では、相手の犯罪行為を指摘して「誠意を見せろ」と言った場合も、恐喝になるのだろうか。
「犯罪に問われる可能性のある行為をした人物がいたとして、その行為が犯罪だと指摘したり、『犯罪をばらす』と告げることは、それ自体では違法だと言い切れません。
犯罪を指摘したり、捜査機関に連絡することは、望ましい行為と言えることもあるでしょう。
しかし、その行為が財産や財産上の利益を得るためになされたものであれば、違法となり、恐喝罪にあたる可能性があります」
つまり、犯罪を指摘しただけでなく、それと同時に金銭を要求したような場合には、恐喝となりうるということだ。
「裁判例でも、恐喝罪における脅迫の内容となる『害悪の告知』は、必ずしもそれ自体が違法なものである必要はない、とされています。
今回の警察官が男性に対して述べたことは、内容としては間違っていないかもしれませんが、警察官は、『誠意を見せろ』とも述べており、財産を得ようとする行為がなされているため、恐喝にあたるとして逮捕されたものと考えられます」
高橋弁護士はこのように結論付けていた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
高橋 善由記(たかはし・よしゆき)弁護士
1972年宮城県仙台市生まれ。2002年弁護士登録(仙台弁護士会)。地元仙台で、離婚問題、交通事故等で困っている方々のサポートに力を入れており、月に30件以上の相談を受けている。
事務所名:高橋善由記法律事務所
事務所URL:http://www.sendai-rikon.net/