2014年03月14日 19:10 弁護士ドットコム
自宅で3歳の長男に犬用の首輪をつけ、長さ1メートル20センチのヒモで家の窓枠につないで、身体の自由を奪った――そんな容疑で、26歳の父親が2月下旬、徳島県警に逮捕された。刑法上の罪状は「監禁罪」だという。
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報道によると、逮捕された父親は昨年の夏ごろから、夫婦が食事をするときや寝るとき、外出するときに、長男を首輪でつないでいた。警察の調べに対して容疑を認めており、「長男が部屋を散らかさないように、しつけのつもりでやっていた」などと供述しているという。母親についても、3月に入り逮捕されている。
ところで、一般的には「監禁」というと、鍵付きの部屋に閉じ込めるといったイメージがあるのではないだろうか。今回のように「首輪でつないでいた」というケースでも、監禁とされるものなのだろうか。刑事事件にくわしい徳永博久弁護士に聞いた。
「刑法上、人の『身体活動の自由』を拘束する犯罪としては、『逮捕罪』と『監禁罪』があります。
まず『逮捕』は、人の身体を直接的に支配し、その身体活動の自由を奪うことを意味します。縄で手足を縛る行為などが、その典型例です。
他方、『監禁』とは、人を一定の場所から脱出できないようにして、その身体活動の自由を奪うことを意味します。ある程度の行動の自由が認められていても、場所的移動の自由に制限が加えられていれば、『監禁』に該当します」
首輪とひもで自宅内の窓枠に結びつけるというのは、「逮捕」と言えそうな気もするが、どうなのだろうか。
「首輪とひもによって、窓枠に結びつけられていた状態は、一定範囲においては自由に動けるものの、ひもの長さを超えた場所には移動することができないという状況でしょう。
そうなると、その身体活動の自由が『直接的支配によって奪われた』というよりも、『行動範囲が制限されていた』と考えるほうが自然です。そこで、『逮捕』ではなく、『監禁』の容疑とされたのでしょう」
こう聞くと、逮捕なのか監禁なのか、中には微妙なケースもありそうだが・・・。実務上は問題とならないのだろうか? 徳永弁護士は次のように話していた。
「逮捕と監禁はしばしば連続して行われることもあり、刑事実務上、その限界を明確に区別しにくいのが実情です。
ただ、両罪は刑法220条という同一の条文内に並べて規定されており、法定刑も同一です。したがって、強いて厳密に区別する必要はなく、場所的な拘束の要素が強いのか、身体の直接的拘束の要素が強いのか、という程度に応じて、いずれかの罪を適用すればよい、という運用がされています」
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/