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借りていた「カーポート」が「大雪」でつぶれて車が大破! 大家に賠償請求できるか?

2014年03月13日 13:50  弁護士ドットコム

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ソチ五輪でテレビが盛り上がっていた2月中旬、東日本を記録的な大雪が襲った。体育館や駅のホームなどの屋根が、雪の重みで崩落する事故が各地で起きたほか、民家の車庫がつぶれる被害が報告された。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、「カーポートの崩落」についての相談が寄せられている。


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相談者は、カーポート付きの駐車場を月額2000円でアパートの大家から借りていた。トタン屋根のカーポートは老朽化しており、鉄筋の筋交いが外れるなどボロボロの状態だったが、管理会社が定期的に点検しているものと思い、大家には連絡せずそのまま使い続けていたという。



ところが、今回の大雪でカーポートの屋根が崩れ落ち、車が下敷きになって壊れてしまった。車の修理代金は、20万円もかかる見込みなのだそうだ。そんな事態を受け、相談者は「車の修理代金を全額払わなければいけないのでしょうか」とつづっている。



このような場合、カーポートの借主は大家に対して、車の修理代金を請求できるのだろうか。廣瀬真利子弁護士に聞いた。



●大家にはカーポートを修理する義務がある


「駐車場の賃貸借契約が結ばれていた場合、大家には、賃借人(借主)が賃貸物を使用・収益するために必要となる『修繕』を行う義務があります」



このように廣瀬弁護士は説明する。



「本来ならば、大家は、カーポートの修繕が必要になった時点で、修繕すべきであったといえます。



今回の相談のケースでは、大家がこの修繕を怠ったことにより、雪でカーポートが崩落し、相談者の車が破損したと考えられます。したがって相談者は、大家に車の修理代金相当額の賠償を求めることができるでしょう」



このような場合、車の修理代金を大家に請求できるというのが、通常のようだ。だが、例外もある。



「実際には、賃貸物の状態を一番よく把握できるのは、ふだん利用している賃借人(借主)であることが多いといえます。そこで、賃借人が賃貸物の『修繕すべき箇所』を発見した場合には、大家に遅納なく通知するよう、民法で定められています。



この規定を受けて、通常、賃貸借契約でその旨、定めています。ですから、本件では大家から『借主が適切な通知を怠ったためにカーポートの修繕が遅れた』等の反論が予想され、借主への損害賠償額が減額されることもありえます」



賃借人が賃貸物に関する大家への修繕通知を怠っていた場合は、すんなり修理代を請求というわけにはいかない可能性もある。



このように被害者側にも落ち度がある場合、これを考慮して損害賠償額が減額されることを、法律用語で「過失相殺」という。さらに、以下のような大家からの予想される。



●何十年に一回の自然災害は「不可抗力」か?


「今回の大雪が何十年に一回という想定外の自然災害であって、仮にカーポートに適切な修理がされていたとしても大雪で崩落しただろう、といえたとします。そんな場合には、大雪という『不可抗力』の自然災害を原因とする車の破損であるので、大家は損害に対して責任を負わない、と結論づけられる可能性もあります」



この「不可抗力」という主張が通った場合、カーポートの借主は大家に賠償請求できないことになる。今回の大雪がこのような想定外の「不可抗力」にあたるかどうかは、地域や積雪量などによっても、判断が分かれそうだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
廣瀬 真利子(ひろせ・まりこ)弁護士
第二東京弁護士会所属。同弁護士会綱紀員会嘱託(2009年-2012年)
東京都新宿区マンション管理相談員
事務所名:サンフラワー法律事務所
事務所URL:http://www.sunflower-law.com/