2014年03月12日 17:50 弁護士ドットコム
「おれ、実は結婚してるんだよね。中学生になる娘もいるんだ」。東京都内の企業で働く女性Kさん(27)は、それまで独身だと思っていた年上の恋人男性から、突然の告白を受けて絶句した。
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男性とは付き合いはじめて半年以上が経つが、一泊二日の旅行などに頻繁に連れて行ってくれたり、不自然な素振りもなかったことから、Kさんはそんなこと思いもよらなかったそうだ。しかし、自分では気づかなかったとはいえ、妻子ある男性と不倫関係を結んでしまっていたことになる。
相手の妻は、すでにKさんの存在に気づいており、慰謝料を請求すると息巻いているという。このように、不倫関係だと知らなかった場合でも、Kさんは慰謝料を支払わなければならないのだろうか。男女問題をめぐるトラブルにくわしい佐々木未緒弁護士に聞いた。
「慰謝料を請求するためには、相手に『故意または過失』がなければなりません」
と佐々木弁護士は言う。これは民法709条の定めに基づくもので、「不法行為」による損害賠償をするためには、相手にこの「故意または過失」があることが要件になる。それでは、このKさんの事例ではどうか?
「このようなケースの場合には、妻子がいることを知らなかったのですから『故意』はありません。そこで、妻子がいることに気付かなかった点に『過失』があるのかどうかが問題になります」
「過失」というと難しそうだが、分かりやすく言うと次のようになる。
「普通の人であれば『ん?』と思うような内容や出来事があった場合や、『それは、ちょっと気にすれば、気付けたんじゃないの?』とか『ちょっとくらいはおかしいとは思わなかったの?』と言えるような場合には、『過失』が認められてしまいますね」
具体的には、どんな事情が「過失」に当たるのか?
「たとえば、次のような事情です。
・一度も彼の家に行ったことがない
・行きたいと言っても不自然に断られた
・自由に電話をすることができない
・日曜日やクリスマスや年末年始など、家族で過ごすことが多いときに会うことができなかった
・家族構成やこれまでの女性との交際経緯の説明が不自然だった
このような事情があるのに、妻子がいることに気付かなかったとすれば、『過失』が認められる可能性がありますね」
なるほど、そういう事情があれば、普通の恋人同士の関係ではないと察するのが自然だろう。そうなれば、不倫相手の奥さんから訴えられた場合に、敗訴してしまう可能性も高くなるというわけだ。
「『過失』が認められた場合、慰謝料を支払わなければならないのですが、『故意』で不倫していた場合と比べれば金額は少なくなります。
もし、彼からのメールなどで独身を装っていたことがわかるものがあれば、故意ではなかったと認めてもらいやすくなりますよ」
いずれにしても、不倫がしたかったわけではないのに、慰謝料を請求されてはたまらない。
「恋に落ちているときには、自分の目は節穴。友達や同僚などの周りの人に、客観的な意見を聞いてみるのが賢明です!」
と佐々木弁護士はアドバイスする。もし恋人の行動に不審な点があったら、周囲の信頼できる人に相談してみるのが良さそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
佐々木 未緒(ささき・みお)弁護士
札幌弁護士会所属。ココロもケアする離婚弁護士。離婚は次の新しい人生で幸せになるための第一歩。離婚はそのプロセス次第でたくさんのことを教えてくれる。そしてたくさんの新たなシアワセを運んでくれる。「シアワセな道に歩む第一歩を私と共に歩みましょう!」
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com