2014年03月12日 15:50 弁護士ドットコム
神奈川県の弁護士たちが加入する横浜弁護士会は昨年、司法制度に関して提言する「神奈川司法計画2013」をまとめ、公表した。その目玉が、現在5つある家庭裁判所の数を、一気に倍の10拠点に増やすべきだという「家裁倍増計画」だ。
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同計画では、新たに設ける分を「家庭裁判所出張所」として、簡易裁判所に併設することを提言。裁判官や書記官、調査官の数も増やすことを求めている。
なぜいま、家庭裁判所を増やす必要があるのか。また、実際に家裁倍増を実現するためには、どのような課題があるのか。今回の提言書の作成にかかわった横浜弁護士会の間部俊明弁護士に聞いた。
「神奈川県の人口は908万人(県による推計値)で、大阪府を抜き、東京23区の人口をも上回っています。しかし、民事・刑事事件を扱う簡易裁判所は県内に11カ所ありますが、家庭裁判所は、横浜市にある本庁と川崎、小田原などの4支部の計5カ所しかないのです」
このように間部弁護士は説明する。
「家裁の数は少ないのに、離婚や相続をめぐる紛争は増える一方です。地方自治体が行う無料法律相談の内容を調べたところ、こうした家裁がらみの相談が全件数の43%にのぼることが分かりました。
現在、調停や離婚訴訟によって離婚する人は約1割で、ほとんどが家裁を通さない協議離婚となっています。しかし、離婚調停を申し立てる人がもう1割でも増えたら、今の体制では、事件を処理しきれなくなるでしょう」
間部弁護士はこう危機感を募らせる。
「一方、刑事事件においても、重大事件の多くが、家庭の不和や相続のトラブルを原因としています。家裁での調停で、離婚や相続の紛争をうまく解決できれば、刑事重大事件を未然に防ぐことができるでしょう。
また、超高齢社会となって、成年後見事件の件数も増えています。とりわけ、親族がいないなどの理由で、市区町村長による成年後見の申立てが増えています」
間部弁護士によれば、家庭裁判所はいまや社会に欠かせない「重要なインフラ」になっているという。「家裁の充実は、社会の安心・安全のために必要不可欠といえるのです」。横浜弁護士会が提唱する「家裁倍増計画」の背景には、そのような家裁へのニーズがあるわけだ。
「『神奈川司法計画2013』の提唱する横浜家庭裁判所の倍増のためには、裁判所予算の大幅増額が必要です。そのためには、家庭裁判所を大きくすることをこれからの国づくりの柱とすることについて、国民的合意が求められています」
これからの課題について、間部弁護士はこう述べていた。横浜弁護士会が提言した「神奈川司法計画」の全文は、同弁護士会のウェブサイトに掲載されている。
(神奈川司法計画2013 横浜家庭裁判所の抜本的充実を求めて)
http://www.yokoben.or.jp/profile/gaiyou/ketui/pdf/kanagawa_keikaku2013.pdf
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
間部 俊明(まなべ・としあき)弁護士
1979年弁護士登録。横浜弁護士会地域司法計画委員会委員長。前神奈川大学法科大学院教授。
事務所名:間部法律事務所