2014年03月07日 16:50 弁護士ドットコム
ファッション誌「小悪魔ageha」の読者モデルで、「武田信玄の末裔」を自称して話題になったこともある女性が、東京都内のホームセンターで「万引き」をした疑いで現行犯逮捕された。
【関連記事:「佐村河内」楽曲の著作権は誰のもの? 「ゴーストライターの著作権」を考える】
報道によると、この女性モデルは、ショッピングカートに商品を入れたまま、レジを通らずに店の外へ出たところで、警備員に取り押さえられた。被害金額は20~30万円にのぼるという。
万引きというと、菓子やマンガといった比較的少額の商品を店舗から盗む行為というイメージがあるが、今回は金額が大きかったようだ。では、このように被害額が大きい場合と、「100円のガム」のように金額が小さい場合で、刑の重さは変わってくるのだろうか。刑事事件にくわしい木村昌則弁護士に聞いた。
「被害金額で、刑の重さは大きく変わることがあります」
木村弁護士はきっぱりと言う。だが、法律に「●●円なら懲役●●年」といった感じで書かれているのかといえば、そうではないという。
「刑法上、万引きは『窃盗罪』に該当し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処することが定められています。刑法に被害額との関係が書かれているわけではありませんが、被害金額は、刑の重さを決定する際の大きな考慮要素となります」
具体的には、どのように判断されるのか。
「たとえば、100円のガムを初めて万引きした場合、これを正直に認めて十分に反省しているならば、微罪処分といって、警察官による厳重注意のみで終了する場合もあります。
一方、被害金額が20万円から30万円である場合、万引きとしては決して少ない金額とはいえません。そのため、初犯であっても、罰金刑の上限(50万円)に近い刑に処せられたり、場合によっては、公判請求といって、公開の法廷における裁判を請求され、懲役刑の執行猶予付き判決などを言い渡される可能性も否定できません」
一般人の感覚としても、100円のガムを万引きした場合と20万円以上盗んだ場合で、刑の重さが変わってくるのは妥当な感じがする。ただ、「金額」だけがすべてではないという点は、注意が必要だろう。
「万引きの刑の重さは、被害金額だけで決定されるものではありません。犯行に至った動機や犯行の態様、被害回復の有無や前科・前歴の有無などの事情が総合的に考慮されて決定されます。
仮に被害金額が数十万円以上と多額であっても、被害店舗に謝罪を行った上で示談を行うなどした場合には、処分が軽減されたり、起訴猶予となって罰金や公判請求等の処分を受けない可能性もあります」
このように木村弁護士は説明する。したがって、どのような刑になるのかは、「万引きによって逮捕された後の対応も重要」というわけだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
木村 昌則(きむら・まさのり)弁護士
企業再生事件と刑事事件を最重点取扱分野とする。大手総合商社において社内弁護士として勤務し、自らが弁護士の顧客となった経験から、徹底して顧客目線に立ったリーガルサービスの提供を信条としている。
事務所名:木村昌則法律事務所
事務所URL:http://www.kimuram-law.com/