2014年02月26日 12:52 弁護士ドットコム
ハリウッド俳優のブラット・ピットとアンジェリーナ・ジョリー夫妻が新たに養子縁組を考えていると報道され、話題になっている。夫妻にはすでに、3人の実子と3人の養子、計6人の子どもがいるが、さらにエチオピアから女の子を養子として迎えることを検討しているという。
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ブラピ、アンジーに限らず、アメリカでは養子縁組が盛んだ。朝日新聞GLOBEの記事によると、年間12万件以上の養子縁組が成立するという。特に、公的な里親制度を利用した養子縁組がそのうちの約5万件にのぼるとされる。
一方、日本の場合、6歳未満の子が対象となる特別養子縁組の数は年間300件前後と格段に少ない。なぜ日本とアメリカで、小さな子どもを対象にした養子縁組の件数が大きく違うのだろうか。また、特別養子縁組とはどんな制度で、その課題はどんな点にあるのだろうか。家事事件に多く関わってきた石川一成弁護士に聞いた。
「特別養子縁組は、実の親が育てられない要保護児童に、新しい家庭を与えることがそもそもの制度目的とされています。
最大の特徴は、養子となる子どもと『実の親』との親族関係が、法律上は『終了』するということです。つまり、その子どもは法的に、新たに養子縁組をした『養父母』だけの子になるのです」
実の親との関係が切れるという点で、里親が子どもを預かって一時的に育てる「里親制度」や、二組の親子関係が併存する「普通養子縁組」とは異なるという。
「普通養子縁組は、合意と届出で成立します。それに対して、特別養子縁組を成立させるためには、家庭裁判所の審判が必要です」
ほかにも、特別養子縁組の親になる側は原則として、25歳以上で、配偶者がいなくてはならず、特別な事情がない限り離縁できない……といった様々な条件が課されるという。
「特別養子縁組は、親子関係の終了という重大な効果を及ぼすため、数々の厳格な要件が課されているのが特徴ですが、問題も指摘されています。
たとえば、特別養子縁組をするためには、『実の親の同意が原則必要』とされている点です。これが問題になるのは、実の親が行方不明で連絡が付かないようなケースです。
法律上は、実の親が行方不明の場合、同意がなくても許容されうることになっています。しかし、養子の斡旋(あっせん)機関である児童相談所は、後になって実の親が現れてトラブルになるのではという懸念から、一般に特別養子縁組の申立てを控える傾向があるようです」
特別養子縁組には養子の年齢という、タイムリミットもあるという。
「また、養子の年齢についても原則6歳未満という制限があり、それ以上の年齢の児童を特別養子にはできません。
これも、実父母が行方不明等の場合にまで年齢制限を設けるのは、合理性に乏しいと言われています。
このように、特別養子縁組が現実的に利用しにくい制度であることが、日本で小さな子どもの養子の数が少ない一つの原因と考えられます」
石川弁護士は日本の養子制度の問題点をこのように指摘したうえで、次のように述べていた。
「アメリカは『すべての子どもは家庭的環境で養育を受ける権利がある』という理念の下、養子制度を発展させて来ました。日本もこれを見習い、法の不備の改正のほか、里親養子手当制度や養子斡旋法の制定など、国を挙げた施策が望まれます。
家庭に恵まれない子どもと、子どもに恵まれない父母のマッチングを図り、幸せな家庭を一つでも多く増やしていくことが、日本の養子制度にも期待されています」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石川 一成(いしかわ・かずなり)弁護士
第二東京弁護士会所属。家事事件を中心に民事、商事事件を幅広く取り扱う。離婚事件に関しては数百件関わった実績があり、相続事件も多数手掛けている。
事務所名:杉並民事家事法律事務所
事務所URL:http://www.smk-law.jp/