2014年02月22日 13:10 弁護士ドットコム
「アベノミクス」に沸き、盛んに景気回復が叫ばれた2013年だったが、パートやアルバイトなど非正規雇用の人の割合が過去最高になっていたことが、国の調査でわかった。
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国の「労働力調査」(2013年平均)によると、過去最高になったのは、役員をのぞく被雇用者のうち非正規雇用の労働者の割合。前年から1.4ポイント増えて、36.6%にのぼった。男女別だと、男性が1.4ポイント上昇の21.1%、女性が1.3ポイント上昇の55.8%となった。
非正規雇用者の人数自体も増えていて、前年比93万人増の1906万人。内訳はパートが928万人、アルバイトが392万人、契約社員が273万人などだった。
こうした調査結果について、労働者側で労働問題に取り組む弁護士はどうみているのだろうか。白川秀之弁護士に話を聞いた。
「非正規雇用労働者は、1990年代から増加し続けています。そこには大きく分けて、2つの問題があると考えています。
まずは、『正社員』になりたいという人に対して、企業がその道を閉ざし、逆に非正規雇用を拡大する施策を推進してきたことですね。これでは、非正規雇用労働者が増えるのも当然です。
もう一つは、ひとたび『正社員』になると、労働時間や勤務場所、業務内容面で『無限定』とされ、責任ばかり多い働かせ方をさせられているということです。正社員になったからといって、必ずしも適切な労働環境とはいいがたい現実があるのです」
そもそもの話だが、非正規雇用はなぜ否定的にとらえられるのだろうか?
「まずは、雇用が非常に不安定なことですね。たとえば、契約期間終了時に『雇い止め』された場合、裁判で『雇い止めは無効だ』と認めてもらおうとしても、非常に難しい場合が多いです。
また、一般的に非正規雇用は給与面でも不利で、正規雇用されている人と同じ仕事をしていたとしても、賃金は低く抑えられているケースがほとんどです」
このように白川弁護士は指摘したうえで、次のように述べる。
「こうした点を考えると、非正規雇用の増大に、歯止めをかける必要があると思います。
2012年の労働契約法改正で、同じ職場で契約更新をくり返し、5年以上経過したような場合には、契約を『無期限の雇用契約』に変えてもらえる権利(無期雇用転換権)が、労働者に認められるようになりました。
しかし、これだけでは歯止めとして、不十分です。具体的には、企業が有期雇用契約を使える場面を限定する『入り口規制』などの対策が必要となってくるでしょう」
対策が実現する見込みは、どれぐらいあるのだろうか。今後の見通しは?
「いまはむしろ、逆の方向へ進んでいます。
たとえば現在、厚生労働省は派遣法を改正し、派遣労働の期間制限をなくそうとしています。これが実現すれば、非正規雇用はますます増えます。
これ以上の非正規雇用の増加はワーキングプアを増やし、貧困者を増やすだけです。このような動きを何としても阻止しないといけないと思います」
白川弁護士はこう警鐘を鳴らしていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年弁護士登録。一般民事事件を幅広く行っておりますが、労働事件を専門的に取り組んでおります。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局次長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/