トップへ

ボクシング亀田ジム「国外追放」処分 「法廷闘争」による反撃は可能なのか?

2014年02月21日 21:00  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

国際ボクシング連盟(IBF)の世界スーパーフライ級王者の亀田大毅選手が、試合に負けたのに王座を保持したままになっている「負けても防衛」問題が、尾を引いている。同選手が所属する亀田ジムは、日本ボクシングコミッション(JBC)によって、会長とマネージャーのライセンス更新を止められ、事実上の「国外追放」に追い込まれる事態となった。


【関連記事:耳が聞こえるのに「聴覚障害者手帳」を持っていたら・・・なにかの「犯罪」になるの?】



●統一王座のタイトルマッチで「事件」は起きた


ことの発端は、昨年12月のIBFとWBA(世界ボクシング協会)による統一タイトル戦だ。まず、WBA王者のリボリオ・ソリス選手が試合前の計量失敗で「タイトル剥奪」になった。それでも試合は行われることになり、試合前日のルールミーティングのあと、IBFとWBA、JBCの三者が開いた共同記者会見では、IBF王者の亀田選手が負けた場合、同王座は「空位」になるとされた。



しかし、いざ亀田選手が負けると、IBF立会人が「そもそも負けても防衛のはずだった」と発言。亀田サイドも「ルールミーティングで、負けても防衛と書かれた文書が配られた」などと主張し、騒動へと発展したのだ。



JBCはこのドタバタについて、「ボクシングの公平性が疑われ、JBCの信用を傷つけられた」と問題視。亀田ジムの会長とマネージャーを不適格だとして、資格停止処分とした。一方、亀田サイドはJBCに再審議を要請し、処分がくつがえらないなら、「法的手段」を取る方針だと表明している。



今後は、どのような展開が予想されるのか。亀田ジムは法廷闘争によって、反撃することができるのか。今回の騒動をめぐる議論のポイントについて、スポーツ関連の法的問題にくわしい辻口信良弁護士に聞いた。



●再審議で決着しなければ「地位確認訴訟」へ


「今は再審議が申立てられているようですが、亀田側がその結果に納得できない場合、処分無効を求めて、地位確認訴訟を起こすことが考えられます。



また、JBCの合意があれば、日本スポーツ仲裁機構で判断してもらう方法もあるでしょう」



辻口弁護士はこのように話す。今回の処分について考えるうえで、ポイントとなるのは、どういった点なのだろうか?



「そもそもIBF規約には、『挑戦者側の体重超過で試合を行った場合、勝敗に関係なく、王座は防衛される』とあります。亀田側の主張は、『この規約通り、負けても王者だ』というものです。



この点、IBF立会人は、ルールミーティング後の会見時には、報道陣に『亀田が負けた場合、IBF王座は空位』と断言しましたが、試合後にそれを撤回しています」



●前日の「ルールミーティング」の内容がポイント


そうやって生じた混乱について、JBCは亀田ジム側の責任を指摘し、処分をしたわけだが……。辻口弁護士自身は今回の問題をどう見ているのだろうか?



「焦点は、JBCも立ち会った前日のルールミーティングで、どのような内容が語られたかでしょう。



さきほど述べたIBF規約のコピーが配布されたことは間違いないようですが、そこで王座の行方をめぐってどんな話がされたのかが、大きなポイントです。また、IBF立会人の記者会見での発言と規約の内容との関係をどう考えるか、ですね」



このように述べたうえで、辻口弁護士は、「ただ、根本的には、試合管理等に関するJBCの監督・ガバナンスに問題があるといわざるをえません」と指摘する。



「報道によると、JBCはルールミーティング時に、亀田大毅選手が負けた場合に王座がどうなるかについて、確認を怠ったと伝えられています。国内のプロ・ボクシング全体を統括する機関としては、不備を指摘されても仕方がありません。



この前提には、ホームタウンでの試合であり、亀田側はもちろん、IBF、そしてJBC側にも、3㎏以上も体重超過の不摂生な相手に亀田は負けない、との甘い認識があったように思います」



辻口弁護士はこのような見解を述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
辻口 信良(つじぐち・のぶよし)弁護士
大阪弁護士会所属。日本スポーツ法学会理事、20年以上にわたり、主として選手側からスポーツ問題で発言。ヤクルトスワローズ古田敦也・ガンバ大阪宮本恒靖各選手らの代理人、近時は告発した全柔連女子15名の代理人を務める。その他、離婚・相続等民事事件全般を取り扱う。
事務所名:太陽法律事務所
事務所URL:http://www.taiyo-law.jp/instanthp/page04.html