2014年02月21日 12:20 弁護士ドットコム
長髪、サングラス、黒っぽい服装――。ゴーストライター問題で渦中の作曲家・佐村河内守(さむらごうち・まもる)さんは、このような独特の風貌を持つ。ところが、外見に共通点が多いことから、思わぬ「とばっちり」を受けた人物がいる。
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アニメ「進撃の巨人」の主題歌で知られ、昨年末のNHK紅白歌合戦にも出場した「リンクト・ホライズン」のボーカルRevoさんは、知らない人に佐村河内さんと間違われ、「あなたのCDはもう二度と買いません」と言われたと、ブログで明かした。
「日本よ、これが風評被害だ」。こんなRevoさんの書きっぷりからすれば、今回の話は軽いジョークとも受け取れる。だが、他人と間違われたせいで、嫌な思いをした経験がある人もいるだろう。もし、そのような人違いによる「風評被害」を受けた場合、自分と似た「誰か」に慰謝料を請求することはできるのだろうか。秋山直人弁護士に話を聞いた。
「Revoさんのブログはジョークと思われますので、あまり真面目にコメントするのもどうかとは思いますが……」。秋山弁護士はこう前置きしたうえで、次のように指摘する。
「まず、いわゆる『風評被害』とは、『ある事件や事故が広く報道されることによって、実際には安全な商品・サービスなのに、消費者等が事件・事故との関係を疑ってその危険性を懸念し、買い控え等が行われることによって引き起こされる経済的被害』のように定義されます。
Revoさんの件は、この定義に照らせば、『風評被害』というよりは、『人違いによるとばっちり』の問題かと思います」
「とばっちり」だとしても、人違いによって何らかの被害を受けた場合、賠償はあり得るのだろうか?
「今回、Revoさんに向けられた『あなたのCDはもう二度と買いません』という言葉の意味は、佐村河内さんのCDを買わないという意味だと思われ、そうなると実際にはRevoさんに経済的被害は生じていないでしょう」
それではもし、何らかの被害が発生していればどうだろうか?
「仮に、『騒動を起こした人』と間違われたことで、経済的被害や精神的被害が生じた場合でも、過失があるのは『人違いをした人』です。
『騒動を起こした人』は、人違いについてまで、故意・過失があるわけではありません。したがって、『騒動を起こした人』が、人違いにより発生した損害についてまで賠償責任を負うことは、まずないだろうと思います」
秋山弁護士はこのように解説したうえで、「もし人違いによって深刻な実害を被った場合は、その『人違いをした人』に対して賠償請求することは考えられると思います」と結論づけていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は現在弁護士6名で、交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債務整理、契約紛争、離婚・相続、不動産関連、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:山崎・秋山法律事務所
事務所URL:http://www.yamaaki-law-office.com/