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「死刑判決」を出すべきか――裁判所が判断の目安にしている「永山基準」ってなに?

2014年02月17日 12:00  弁護士ドットコム

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宮城県石巻市で2010年に起きた殺傷事件で、元交際相手の姉ら2人を殺害し、男性1人に大けがをさせたとして、殺人罪などに問われた元少年が、控訴審でも「死刑判決」を受けた。1審では、裁判員裁判の少年事件として初めて「死刑判決」が下された。そのため、控訴審がどう判断するのか、大きな注目が集まっていた。


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報道によると、仙台高裁の飯渕進裁判長は1月31日の判決で、無抵抗の被害者を何度も牛刀で刺した点や、2人の死者を出した結果の重大さを指摘。被告人が当時18歳だったことや、幼少期に虐待を受けたことなどを考慮しても、死刑回避の余地はないと判断したという。



ところで、この控訴審判決は「永山基準」に沿って下された、と報じられている。死刑かどうかを判断する際に用いられる基準ということだが、具体的にはどんな内容なのだろうか。刑事事件にくわしい平賀睦夫弁護士に聞いた。



●永山基準では「9つのポイント」が示されている


「『永山基準』とは、1968年に起きた永山事件の最高裁判決(1983年7月8日言渡)で示された基準です。この事件は、当時19歳になったばかりの永山則夫少年が、東京・京都・函館・名古屋で連続して4人を射殺したというもので、社会に大きな衝撃を与えました。



この永山事件における最高裁判決は、死刑を『誠にやむをえない場合における究極の刑罰』と位置づけ、合憲としました。一方で、『その適用は慎重に行われなければならない』と述べ、次の9つのポイントを挙げました。



(1)犯行の性質、(2)動機、(3)態様(殺害の手段方法の執拗性・残虐性)、(4)結果の重大性(殺害された被害者の数)、(5)遺族の被害感情、(6)社会的影響、(7)犯人の年齢、(8)前科、(9)犯行前後の情状。



判決では、以上全てを考慮したうえで、罪と罰のバランスや、犯罪予防という観点からも、極刑がやむをえないと認められる場合には、『死刑の選択も許される』という判断が示されたのです。



これが、『永山基準』です」



●永山基準はいまも「現役」だが……


この「永山基準」は、現在、どのように位置づけられているのだろうか?



「石巻市の3人殺傷事件の裁判でも言及があったようですが、この永山基準はいまも現役の基準として、裁判所によって参考にされています。



ただ、この問題から一歩踏み込むと、そこには『死刑制度そのものをどう考えるか』という大きな問題が横たわっています。



この『永山基準』を、今後もずっと死刑適用の判断基準として使い続けて良いのか、ひいては死刑が『公務員による拷問および残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる』とした憲法36条に、本当に違反しないのか、我々は常に点検し続けていく必要があるのではないでしょうか」



平賀弁護士はこのように述べ、死刑制度に対する議論が深まることを期待していた。



なお、石巻市の3人殺傷事件で被告人の元少年は上告している。今後は最高裁がどのような判断を下すのかに注目が集まりそうだ。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
平賀 睦夫(ひらが・むつお)弁護士
東京弁護士会所属。日弁連・人権擁護委員会、同・懲戒委員会各委員、最高裁判所司法研修所・刑事弁護教官等歴任。現在、(公財)日弁連交通事故相談センター評議員、(一財)自賠責保険・共済紛争処理機構監事等。
事務所名:平賀睦夫法律事務所
事務所URL:http://www.houritsujimusyo.com