2014年02月16日 16:01 弁護士ドットコム
三菱地所レジデンスが売り出した超高級マンションで、大規模な「欠陥工事」が完成間近に見つかった事件が、波紋を広げている。
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東京・青山の一等地にあり、最高価格3億5000万円、最多価格帯が1億4000万円台という「億ション」にもかかわらず、全86戸のうち83戸が売約済みという人気ぶりだった。しかし、配管設備に致命的な欠陥があることが発覚し、3月に予定されていた引き渡しは中止となった。改修には一年以上かかる見込みで、三菱地所レジデンスはマンション購入者に契約の合意解除を申し入れているという。
同社は解約のために、「手付金」を返したうえで、さらにその2倍にあたる金額を契約者に迷惑料として払う方針だと報じられている。高級マンションだけあって、手付金も1000万円を超えていたそうだが、この手付金とは、そもそもどのような性質のものなのだろうか。また、今回のような事態になった場合、どんな扱いをされるのだろうか。池田伸之弁護士に聞いた。
「そもそも『手付金』とは、売買契約を結ぶとき、買い主が売り主に支払う特別な意味合いのあるお金です。
宅建業者に支払う手付金については、買い主は支払った手付金を『放棄』する、売り主は『受け取った手付金を2倍返し』することで、契約を解除できるという性質があります。
この方法による契約解除を『手付解除』と言います。解除ができる期間は限定されていて、相手が契約の履行に着手した後は、手付解除はできません」
今回、三菱地所レジデンスが言い出したのは『合意解除』だ。手付解除とは、どう違うのだろうか?
「『合意解除』は、双方の合意によって契約を解除する方法で、賠償額は合意によって自由に決められます。報道によると、今回は業者側から、手付金を3倍返しするという提案が出ているようですね」
業者はどうしてそんな提案をしているのだろうか?
「今回は、工事の不具合でマンションが居住不能というケースですから、買い主側は、売り主の瑕疵担保責任や債務不履行を理由に、契約を解除できる可能性が高いのではないかと思います。この場合、契約は最初にさかのぼって効力を失い、手付金も戻ってきます。
さらに、瑕疵担保責任や債務不履行によって買い主側に損害が発生した場合には、『損害賠償』も認められます。こうした場合の損害賠償の金額については、契約であらかじめ決められている場合もあり、宅建業者が行う売買契約では、売買代金の20%以内の金額なら有効とされています」
新築マンションの手付金は売買代金の1割が相場と言われている。もし損害賠償の金額が20%だったら、手付金の返還と合わせると、ちょうど「3倍返し」に相当するわけだ。
池田弁護士は「3倍返しという条件は、こういうことが背景にあるのかもしれません」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
池田 伸之(いけだ・のぶゆき)弁護士
愛知県弁護士会所属
事務所名:池田総合特許法律事務所
事務所URL:http://www.ikeda-lawpatent.jp/