2014年02月14日 20:01 弁護士ドットコム
年末年始の最大9連休に続き、2月の飛び石連休、3月の3連休ときて、4月末からはゴールデンウィークと、毎月のように連休が続く。連休と言えば遠出のチャンスだが、行楽でもっとも避けたいのが、高速道路の渋滞だ。いったん引っかかると、場合によっては何時間もの間、身動きがとれないこともある。
【関連記事:「佐村河内」楽曲の著作権は誰のもの? 「ゴーストライターの著作権」を考える】
そんなとき深刻なのが「トイレ」の問題だろう。尿意を我慢しながら渋滞を乗り越え、ようやくサービスエリアにたどり着いたと思ったら、トイレにも長い行列が……なんてことはよくあるだろう。
そこで耐えてみたものの「いよいよ限界」となった場合、どうしたらいいのか。たまたま異性側のトイレに空きがあったとしたら、利用しても許されるのだろうか? 大和幸四郎弁護士に聞いた。
「こうしたケースでは、建造物侵入罪の成否が問題となります」
このように大和弁護士は述べる。サービスエリアのトイレについては、どう考えればいいのか。
「建物の管理者がトイレを『男性用』と『女性用』に分けていた場合、異性の側に入ると、『管理者の意思』に反して建物に入ったことになり得ます。
したがって、正当な理由もなく、異性の側のトイレに入れば、建造物侵入罪の要件を満たす可能性があります」
「もう限界」というのは緊急の場合で、「正当な理由」があると言えないのだろうか?
「その点について、刑法には『緊急避難』(37条)という規定があり、一定の条件を満たせば、緊急でやむを得ずしたことは、処罰されないとされています」
今回のようなケースは、「緊急避難」にあてはまるのだろうか? 刑法37条の条文には、次のような条件が書かれている。
(1)自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、
(2)やむを得ずにした行為は、
(3)これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない
「まず、トイレが大混雑しており、今にも粗相をしてしまいかねないという状況は、『自己の身体や財産に対する現在の危難』と言えそうです」
たしかに、粗相をすれば服などは台無しになるし、我慢をし続ければ膀胱炎などになる可能性だってあるだろう。他の条件はどうだろうか?
「そんな状況に追い込まれた場合、異性側のトイレに入ることは『やむを得ずにした行為』として、必要かつ相当と言えるのではないでしょうか」
では、3番目の『害』については、どうだろう。
「もしトイレが空いているのであれば、現実に大きな損害を受ける人はいないでしょう。もしかしたら洗面台で手を洗っていた人は、異性が入ってきたのを見てびっくりするかもしれませんが、誰かの身体や財産に、直接の害を与えるわけではありませんからね。
したがって、異性のトイレに入ることで『生じた害』は、『避けようとした害』よりも小さいといえることが、実際には多いのではないでしょうか」
大和弁護士はこのように指摘し、「これには異論もあると思いますが、今回のようなケースでは、緊急避難により建造物侵入罪は成立しないと、私は考えます」と話していた。
ただ、この緊急避難が成り立つのは、「あくまで、こうした条件に合致した場合だけ」(大和弁護士)で、他の不正な目的で異性のトイレに立ち入るのは、やはり問題ということだ。もしやむを得ない事情で異性のトイレを使う羽目になった際にも、周囲から変な誤解を受けないよう、最低限の注意を払ったほうが良さそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会委員長。佐賀大学客員教授。借金問題、刑事・男女問題など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/