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「見張りをしただけ」と訴えるオウム平田被告人 「一部否認」に込められた意味とは?

2014年02月13日 18:40  弁護士ドットコム

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オウム真理教の元幹部・平田信被告人の裁判が1月中旬、東京地方裁判所で始まった。警察庁から特別手配され、十数年にもわたる逃亡生活をしていた被告人の裁判とあって、大きな注目を集めている。


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報道によると、平田被告人は、1995年に東京都品川区で起きた公証役場事務長の拉致事件など、3つの事件で起訴されている。このうち、公証役場事務長の拉致事件については、「事前に計画を知らず、消極的に見張り役をしただけ」などと主張し、起訴事実の一部を否認しているという。



もし平田被告人が単なる見張り役にすぎなかったとしたら、罪の重さが変わってくるのだろうか。平田被告人の「一部否認」には、どのような意味があるのか。刑事事件にくわしい萩原猛弁護士に聞いた。



●「共犯」には3つの種類がある


「そもそも犯罪は、1人の人間によって実行される場合もありますが、複数の人間が関与して実行される場合も少なくありません」



このように萩原弁護士は切り出した。いわゆる「単独犯」の犯罪もあれば、「共犯」の犯罪もあるというわけだ。刑法では、共犯について、いくつかの種類に分けている。



「刑法が規定しているのは、『共同正犯』(60条)、『教唆犯』(61条)、『幇助犯=従犯』(62条)の3つです」



それぞれ、どのような違いがあるのだろうか。



「共同正犯とは、2人以上の人間が『共同して』犯罪を実行した場合を言います。共同正犯とされると、犯罪の一部しか実行していなくても、その犯罪全体について責任を問われます。共同正犯者の各自は、互いに意思の連絡をとって、協力し合いながら犯罪を実現するものだからです」



さらに、共同正犯とされる場合について、萩原弁護士は次のように続ける。



「たとえ犯罪行為そのものを直接分担していなくても、犯罪行為そのものに匹敵するほどの重要な役割を分担していたり、犯行計画立案に関与しているなど、その犯罪を実現するために、『本質的な寄与』をしたと認められる場合にも、その者は『共同正犯』とされます。このような犯罪行為そのものを分担していない共同正犯のことを『共謀共同正犯』と言います」



●「共謀共同正犯」なのか、それとも「幇助犯」なのか


組織型の犯罪では、リーダー役が共謀共同正犯とされることが多い。オウム真理教が引き起こした地下鉄サリン事件でも、サリンを直接まいたわけではない麻原彰晃・教団代表(本名・松本智津夫)が共謀共同正犯として起訴され、死刑判決を受けている。



では、共犯のそのほかの類型である「教唆犯」と「幇助犯」は、それぞれどのようなものなのか。



「教唆犯は、他人に犯罪を実行するよう教唆すること、すなわち、そそのかすことをさします。一方、幇助犯(=従犯)は、『正犯者』が犯罪を実行するのを容易にすることです。この幇助犯の場合、その刑は、『正犯』の刑から減軽されます」



つまり、同じ共犯でも、共同正犯になるか幇助犯になるかで、刑の重さが変わってくるのだ。



「報道によると、公証役場事務長の拉致事件について、検察官は、平田被告人を逮捕監禁罪の『共謀共同正犯』として起訴しているようです。これに対し、弁護人は、<平田被告人は公証役場事務長を車で連れ去る際に『見張り』をしただけで、同人の行為は『幇助犯=従犯』にすぎない>と反論しています」



検察官も弁護人も、平田被告人が拉致事件の「共犯」であることは認めている。しかし、「共謀共同正犯」なのか、「幇助犯」なのかで主張が対立しているということだ。



「検察官と弁護人のどちらの主張が認められかは、平田被告人が『直接犯罪行為そのものを分担していなくても、犯罪行為そのものに匹敵する程の重要な役割を分担していたり、犯行計画立案に関与しているなど、その犯罪を実現するについて本質的な寄与をした』ということを、検察官が合理的な疑問を入れる余地なく証明できるか、にかかっています」


裁判のポイントについて、萩原弁護士はこのように指摘していた。今後の公判の行方を追っていくとき、頭に置いておきたい点といえるだろう。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
萩原 猛(はぎわら・たけし)弁護士
刑事弁護を中心に、交通事故・医療過誤等の人身傷害損害賠償請求事件、男女関係・名誉毀損等に起因する慰謝料請求事件、欠陥住宅訴訟その他の各種損害賠償請求事件等の弁護活動を埼玉県・東京都を中心に展開。
事務所名:大宮法科大学院大学リーガルクリニック・ロード法律事務所
事務所URL:http://www.takehagiwara.jp/